運動後の「筋肉の分解」を防ぐ計画的糖質補給法

運動後の栄養補給の考え方(後篇)

2018.10.19(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

東郷 まず、夜に運動をすることが決まっていれば、それを見越して昼間や夕方に、運動しない日よりも多めに糖質量が多いご飯や麺、おもち、パンなどを食べておくなどの工夫が考えられます。

 夜に運動した直後は、まだ食欲がわかないかもしれませんが、翌日の食事までのつなぎとして、おにぎりなど糖質の多い食品を少しでも摂っておくことを勧めます。もし、何も摂らずに寝てしまうと、翌日の朝食まで数時間も絶食することになりますよね。朝食抜きなら、さらに長時間の絶食となります。

 長時間にわたり糖質を摂らないと、身体がエネルギー源を別のところから得ようとして筋肉(タンパク質)を分解しはじめます。それは避けるべきです。

大会前にはグリコーゲン・ローディングを

――マラソン大会に出場して、よいパフォーマンスをしたいという目的の人は、運動と食事の兼ね合いをどうするとよいですか?

東郷 一般的に「グリコーゲン・ローディング」と呼ばれる方法が好ましいといえます。本番に臨むとき、体内のグリコーゲン量を多くしておくという効果を狙ったものです。以前は本番1週間前から取り組むべきといわれていましたが、現在は本番3日前からでも同様の効果が得られると報告されています。

――具体的には・・・。

東郷 ひとつあるのは、3日前に激しい運動を行い体内のグリコーゲンを枯渇させてから、糖質を多めに摂取して、グリコーゲンの量を飛躍的に多くする、といった方法です。グリコーゲンを枯渇させると、身体は「グリコーゲンを貯め込もう」と糖取り込みが促進され、筋グリコーゲン量を増加させます。

 それ以外に、普段どおりの生活を送りながら、食事や補食などから摂取する糖質の量や摂取頻度を多くしていくという方法。また、練習量を軽めにして消費エネルギーを抑えつつ、糖質の摂取量を多くしていくという方法もあります。

 どの方法にするかは、選手の練習スケジュールや状況によって変えることがあります。たとえば、3日前から雨が降って通常の練習ができなければ、練習によるエネルギー消費量は通常よりも少なくなるため、単純に糖質摂取量を多くしていくといった方法にする、といった具合です。

 糖質は、筋肉にグリコーゲンとして貯蔵される際に水分も取り込まれるので、グリコーゲン・ローディングの成功の有無を確認するには、体重の増加量で評価することが簡便です。また、体重が増えて、本番時に膝などに負担がかかる人もいます。ふだん運動をさほどしていない方などは、この点に注意が必要です。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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