Creww Founder and CEO 伊地知天氏

 前回、「日本ではオープンイノベーションという言葉の定義づけが曖昧なまま盛り上がっている」と指摘したCrewwのCEO、伊地知天氏は、「自走こそが理想」だと示した。そのうえで、自走のためには、企業間での「ノウハウの共有」が課題だと語った。では、この課題を解決する糸口はどこにあるのか。

(前編)「大企業とスタートアップは協業しつつ『自走』せよ」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54177

ノウハウの共有がオープンイノベーションを活性化させる

「端的に言えば、ヨコ連携の強化です。例えば、大企業の中でオープンイノベーションを任されるような方は、もともと既存のビジネスや発想に疑問を持ち、変化を積極的に起こして社内を改革していこうという精神を持っています。私たちはそういう方を『イントレプレナー』と呼んでいますが、大きな組織になるほど、現状を維持したい人間が大多数であることから、大企業の内部では孤独な思いをしているケースが少なくありません。もちろん、そうした『イントレプレナー』がスタートアップの方々と出会うことも大切なのですが、ヨコ連携、つまり、他社の『イントレプレナー』と交流することができれば、そこでのノウハウの共有も進むはずです。そう考えて、Crewwではスタートアップや『イントレプレナー』、大企業同士がリアルな場所で直接情報を交換し、創造性を高める働き方ができるコワーキングスペース”docks”を開設しました」

 ちなみに、インタビュー当日も”docks”ではフードテック関連のトークセッションが開催されており、多数の企業社員や学術関係者、Crewwスタッフが意見を交わしていた。つまり、オンラインプラットフォームである”crewwコラボ”と並行して、直接交流できる”docks”を展開し、双方の活用から縦横無尽の連携を生み出していこうという戦略だ。

「今日のイベントの参加企業の名前を見ていただくと一目瞭然ですが、同一業界の競合他社であっても皆さん自然な形で参加されています。各社の『イントレプレナー』が直接交流することで情報を交換し合い、スタートアップともコミュニケーションをとっています。つまり、”crewwコラボ”=オンラインと”docks”=オフライン、また、タテとヨコの連携からコミュニティが生まれ、必然的にノウハウの共有も発生することから、イノベーションが生まれやすい環境につながります」

 スタートアップ側から見ても、タテとヨコの連携がオンラインとオフラインの双方で得られれば、さまざまな知見とチャンスに出会うことが可能になる。そうなれば、大企業もスタートアップも毎回ゼロイチ(0→1)の過酷なチャレンジに取り組まなくても済むはずだと伊地知氏は言う。

「最初は0から1を生むのに苦労したとしても、共有することで得られたノウハウのおかげで次からは0.5から1を生めばよくなるかもしれないし、その次は0.7からスタートしてイノベーションを実現できるかもしれない。このような積み重ねによって日本のオープンイノベーションを活性化、高速化させることが重要だと思います」