イノベーション担当者が「孤独」になってはいけない

日本のオープンイノベーションが抱えている最大の課題とは?(後編)

森川 直樹/2018.10.11

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広がるコラボの輪。地域と、グローバルと

 オープンイノベーションの波は、この2~3年で急速に広がっている。スタートアップや大企業ばかりがその当事者ではない。国や地方も、地方創生というテーマの中でオープンイノベーションへの期待を寄せている。

「地方創生が日本のテーマとしてクローズアップされるようになったこともあり、オープンイノベーションに積極的な地域や都市が増えていることは感じていました。企業開催型のオープンイノベーションだけでなく、テーマや地域に絞って開催する方法を検討していたところ、神戸市よりお声がけいただき、『KOBE OPEN ACCELERATOR』に携わることとなりました」

「KOBE OPEN ACCELERATOR」は、神戸に拠点を持つ企業と全国のスタートアップがコラボレーションしながら、新規事業創出とそのためのエコシステム構築に取り組み、地域の活性化に繋げていこうというもの。一方で、同社に声を掛けている「地域」は国内ばかりではないようだ。

「最近『我が国のスタートアップが活躍できるチャンスをぜひ日本で』というお話をいくつかの国の大使館からいただいています。実は3~4年前から海外にはメッセージを発信していました。それがようやく実を結んできたのだと思います」

 海外での起業経験がある伊地知氏によれば、「日本の大企業は堅く、そう易々と海外のスタートアップとは連携しないだろう」というイメージが強かったのだと言う。それゆえに、ようやく日本国内のオープンイノベーション事情が開けてきたタイミングで、「今の日本企業は堅くない」という発信をしてきた伊地知氏。それもあって、海外との橋渡し役というチャンスが巡ってきたのだ。しかも、繋がりを求めているのは、「日本の大企業×海外のスタートアップ」という図式ばかりではないようだ。

「アクセラレーターの世界的組織であるGAN(Global Accelerator Network)の会合に参加すると、米国の投資家などから『日本のベンチャーに投資したい』という話をいただく機会も増えてきました。農業であったり、高齢者の見守りサービスであったりと日本にはグローバルなチャンスを備えているスタートアップが数多く存在します。海を越えて成立する事例が増えていけば、日本のオープンイノベーション自体もまたグローバルの水準と向き合って、健全化していくきっかけになると考えています」

 こうなれば、Crewwが着手すべきテーマは尽きることがないわけだが、その現実を伊地知氏は喜んで受け止めている。

「ニュースを見ていると、最近では大手事業会社と無名のスタートアップの提携話などが頻繁に登場するようになりましたね。6年前の日本にはほとんど存在していなかったスタートアップエコシステムが短期間で確実に形を成し、実を結び始めたということですから、”crewwコラボ”以外の提携であっても嬉しく思います。大企業を退職してまで起業を志す人や、若くしてスタートアップの可能性に賭けてみようとする人たちが確実に増えてきていることに、私も驚いています」

 それでも課題はまだまだある。最後に大企業、スタートアップの双方に向けてメッセージを語ってもらった。

「大企業の経営陣や『イントレプレナー』の方々にお伝えしたいのは、『オープンイノベーションに成功している企業の担当者は、話をする際の主語が違う』という点です。スタートアップとの連携がうまくいっている担当者は、スタートアップと同じ目線に立って一緒に世の中を変えようとされているので、必然的に『社会は』『この業界は』という主語で自分たちの取り組みをお話しされます。逆に、なかなか連携がうまくいっていない企業の担当者、『連携している』つもりでも知らず知らずのうちに自分たちが中心にいるため、決まって『当社は』という主語でお話しされるんですよ(笑)。『大企業』という考えを捨て、スタートアップの斬新なアイデアや技術を習得するくらいの気持ちでいないと、いつまで経ってもイノベーションは起こせないと私は考えています」

 一方、スタートアップに対しても伊地知氏はこう告げる。

「相手が大規模な事業会社であっても、決して忖度せずに、ヨコの関係としてコラボレーションを築いてほしいと思います。同じ目線に立って、互いに相手を活用し合うことが、Win-Winの成功に繋がるのだということを理解していただきたいです」

 環境は整い、国内外からの追い風で可能性は広がろうとしている。だが、それでもオープンイノベーションを成功させるのは容易ではない。なによりも重要なのは、共創という視点と意識と姿勢を当事者が維持することにあるのだ。