そのなかで目に見えて効果が感じられるのは、3番目の自動車燃料の品質向上です。

 かつて上海では、ディーゼル車の排気ガスが強く鼻につきました。しかし近年は、そのような車は珍しくなっています。

 また、本コラムでもたびたび取り上げているように、中国政府は環境汚染対策として電気自動車(EV)をはじめとする環境対策車の普及を進めています。こうした地道な努力が成果に結びついてきたのでしょう。

あの濁った空が懐かしい・・・

 中国の大気汚染が騒がれるようになったのは、前述の通り2013年にPM2.5の観測データが発表されるようになってからです。しかし、実はそれ以前からずっと大気汚染は深刻でした。

 筆者は、北京五輪(2008年)の開催に向けて建設ラッシュ真っ只中の北京に滞在した経験があるのですが、当時は外を歩くと視界がスモッグでぼやけ、砂ぼこりやコンクリートの臭いが充満していました。

 その頃に比べると、現在の中国の空気や空は同じ国とは思えないほどの変わりようです。正直、よくここまできれいになったものだと驚きを禁じえません。

 ただ、筆者にとっては、かつての北京こそが中国の原風景です。中国に降り立って濁った空を見る度に「この風、この肌触りこそ中国よ!」と、どこかの違いの分かる蒼い巨星のような感傷を覚えていました。それだけに、空がきれいになってきた最近の中国をみるにつけ、「こんなきれいな空、中国じゃない!」と妙な葛藤を覚えていることも事実です。

空がきれいになったことは喜ばしいが、妙な感傷にもとらわれる・・・