観光立国を目指す日本。2020年の東京オリンピックはまさにその起爆剤としての役割も期待されている。ところが、世界第2位の観光大国であるスペインは、”観光客疲れ”とも呼ぶべき深刻な社会問題が起こっているという。スペインやフランスを拠点に活躍し、著書『安楽死を遂げるまで』で講談社ノンフィクション賞を受賞した気鋭のジャーナリスト、宮下洋一氏が観光大国化の負の側面を報告する。(JBpress)
町中にあふれる”外国人排斥”の落書きや抗議行動
年間8200万人の外国人観光客数を誇る国、スペイン。2017年、その数はついにアメリカを抜き、フランスの年間8600万人に次ぐ世界第2位の観光大国となった。
スペイン国立統計局(INE)によると、外国人観光客が昨年1年間に消費した合計金額は868億2300万ユーロ(約11兆3000億円)で、日本のおよそ3倍。10年前に始まった金融恐慌を引きずるスペインにとって、観光産業は国内経済を支える重要な柱となっている。
格安航空のライアンエアーやイージージェットの利用者も欧州内で急増し、スペイン港内の就航地は2002年の1都市から現在は25都市にまで拡大。ライアンエアーは、同国内だけで年間3500万人の旅行者を乗せることから、今や空路の利便性も鍵を握る。バルセロナだけでも、こうした格安航空などを利用して訪れる外国人観光客数は年間1100万人に上るという。
ところが、ここ数年、地元住民らが外国人観光客に対し、不満を募らせている。町中の至るところに「排斥」とも受け止められる落書きや、実際に彼らを追い出すための抗議運動も多発している。
そう。スペイン人は「外国人観光客疲れ」してしまっているのだ。