なぜこうした現象が起きてしまうのか。海外生活25年目になる私には、そうなってしまう事情に理解できる部分がいくつかあるが、ここでは、人気都市バルセロナで起きている2つの出来事を中心に取り上げてみたい。

地元民が住めない町に

「ツーリスト、ゴー・ホーム(旅行者は出て行け)!」「あなたの贅沢な旅 私の残酷な毎日」などの落書きがバルセロナ市内の建物の壁に散見される。2016年には、外国人旅行客に対する市民の排斥感情がピークに達し、観光名所のグエル公園や聖家族教会(サグラダ・ファミリア)周辺には、こんなことが書かれていた。

《Gaudi hates you(ガウディはあなたを嫌っています)》

 バルセロナ観光局によると、当地での五輪が開催される2年前の1990年、同都市にはスペイン人と外国人を合わせた旅行客が173万2000人と小規模だったが、2000年には300万人に上った。それが17年も経つと、外国人だけで1100万人という爆発的な伸びを見せるに至った。

 英紙ガーディアンによると、同市内のホテルには7万5000台のベッド、ホテル以外の宿泊先と違法宿泊施設にはそれぞれ5万台のベッドが設けられているという。また、国内外からの年間訪問者の数は3200万人で、ホテルの利用客数は、そのうちの800万人のみとのデータもある。つまり、バルセロナを訪問する大半の人々は、ホテル以外の宿泊施設を利用しているということになる。

 ホテルを利用しない旅行客が流れている先は、主に観光客用の民泊施設だ。そこで圧倒的な存在感を誇っているのが、世界最大の民泊仲介サイト「Airbnb」(エアビーアンドビー。以下、エアビー)だ。

 日本人の感覚では、まだ民泊施設よりもホテルを利用するほうが一般的かもしれないが、欧米ではエアビーなどを通じて民泊するスタイルはかなり浸透している。実は私もこのサービスを海外出張の際に「ゲスト」として頻繁に利用している。それだけに、「ホスト」がこれを一攫千金の好機と捉えるのも当然の帰結だ。実際、私の周りのスペイン人にも、支払う家賃の2倍を稼ぐ仲間がザラにいて、これを利用しないほうが損するという“巷の一般常識”が蔓延している。

 数年前だが、ホテルの受付で働く友人は、「エアビーの収入が、僕の給料をだいぶ上回った。いくら値段を高くしても旅行客が僕のアパートに集まってくる」と話していた。

 私が大学院生だった2000年、まだ通貨がペセタだった時代に借りていたアパートの家賃は、当時で6万ペセタ、ユーロ換算で約361ユーロだったが、現在では800ユーロ前後に跳ね上がっている。それに対してスペイン人の給料に大きな変化は見られない。となれば、エアビーを利用して金儲けに走りたくなるのも無理はない。