逆にティモシェンコは東部・南部でも高い支持率を得ており、ナショナリズムを控えてオリガルヒ批判を前面に押し出す作戦が今のところ功を奏しているとみることができる。
「美しすぎる」大統領の誕生?
ティモシェンコと現職ポロシェンコが決選投票に進んだ場合、ティモシェンコを警戒する有権者が現職の安定感に流れ、またオリガルヒや地方ボスの支援・動員を取りつけてポロシェンコが再選する、とみられていた。
しかし、複数の世論調査結果はいずれもポロシェンコの支持率が5位前後に低迷していることを示しており、この予測は怪しくなってきた。
仮にポロシェンコが何とか決選投票に辿り着けたとしても、ティモシェンコよりアンチ率が高いため一騎打ちでも不利、ということになる。
こうなると、欧米の批判を覚悟したうえで、大統領陣営がなりふり構わぬ動員に出ることは十分に予想される。
ティモシェンコは強引な政治手法で敵が多い政治家である。副首相時代、経済界の利益を無視した改革を強行し業界を大混乱に陥れ、汚職の嫌疑で逮捕・失脚させられた。
また、オレンジ革命の功績で首相に任命されると、ユーシチェンコ(当時の大統領)のパトロン潰しに躍起になり大統領により解任された。
この時、喧嘩両成敗とばかりにポロシェンコも要職から解任されている。
また、同じく首相在任中、旧ソ連貯蓄銀行の貯蓄額のインデクセーション(物価スライド)を行い、国民の歓心を買うとともに財政に大穴を開けるというポピュリスト的政策も実施した。
こうした「行動力」に一部の有権者は停滞した現状の打破を期待し、一部の有権者は国政混乱を憂慮することになる。
思えば、ティモシェンコはかれこれ20年間、政治的立ち位置とともにヘアースタイルを変えながらウクライナ政界の最前線で活動し続けている。還暦を再来年に控えたティモシェンコ、3度目の正直となるか。