IMFはガス料金値上げがない限り新たな融資を行わないと明言しており、欧米諸国も、汚職対策法内の骨抜き条項の削除をポロシェンコ政権に求めている。

 現政権は、ヨーロッパ化を国是としているため、このような要求を無視できない。

 ヤヌコヴィッチ前大統領はIMFの融資条件を蹴ってロシアの援助に走ったが、現政権がロシアの財政支援に頼ることは有り得ない。

 欧米は、ウクライナに他の選択肢がないことを理解しているため、政治的配慮なしに圧力をかけられるわけだ。

 現政権の今一つの選挙対策はナショナリズムによる動員である。

 ポロシェンコは、分裂状態にあるウクライナ正教会の一派であるキエフ主教座と親密な関係にあり、キエフ主教座を中心としたウクライナ正教会の統一を画策している。

 国家に接近して「国教」に近い立場を狙うキエフ主教座と、選挙アピールの材料が欲しい現職との利害が一致している形だ。

 いずれにせよ、ロシアとの事実上の戦争状態の中で国内世論の過半が「ヨーロッパ路線」、「EU・NATO(北大西洋条約機構)加盟」を支持している以上、単なる「ヨーロッパ化」「EU・NATO」を主張するだけではティモシェンコを筆頭とする他の候補者との差別化は計れない。

 有権者の支持をさらに獲得するには、これまでとは異次元な方法でナショナリズムに訴えるしかないが、逆にウクライナ東部・南部の有権者の支持を失うことにもなる。

 ドンバスの一部およびクリミア半島の有権者がウクライナ政治から消えたとはいえ、ハリコフ、ドニプロ(旧ドニプロペトロフスク)、オデッサなどの百万都市を抱える地域は軽視できない。