このように、南シナ海での海洋前進基地群が完成に近づいた中国は、再びサラミ戦術を用い始めた。徐々に軍事的有性を強化しつつ、次なるチャンスを持ち続け、再び機会が到来したならば、さらに露骨に覇権を拡大しようというわけだ。

「取られたら、取り返せない」という教訓

 西沙諸島や南沙諸島での中国による軍事的優勢確立の事例は、どんなちっぽけな島嶼や環礁でもいったん占領されてしまうと、それを元の姿に差し戻させるのは極めて困難であることを如実に物語っている。すなわち、外交的圧力や軍事的示威行動程度の手段で中国に西沙諸島や南沙人工島から手を退かせることが不可能であることは明白だ。

 米軍関係者の間でも、中国が巨費を投じて創り出した人工島海洋基地から中国軍を撤収させるには米中戦争に打ち勝つことしか選択肢はないということが、もはや常識となっている。

 とはいえ、トランプ政権や米連邦議会、それに米軍当局が、アメリカの領土ではない「ちっぽけな環礁」(それもほとんどのアメリカ人が知らない場所)を巡る紛争に介入して米中戦争に突入する意思決定を下す公算はもちろんゼロに近い。

 このような現在進行中の南シナ海での中国による覇権確立状況は、万が一にも日本の「ちっぽけな島嶼」が中国に軍事占領された場合、どのような運命をたどることになるのかを誰の目にも見える形で示唆しているといえよう。

 日本国防当局関係者の一部は驚くべきことに、「いったん敵に島嶼を取らせて、しかる後にその島嶼を奪還する」というアイデアをしばしば口にしている。しかし、そうしたアイデアを絶対に島嶼防衛戦略に組み入れるべきではない。どんなに「ちっぽけな」島嶼といえども、絶対に中国軍に占領されてはならないのだ。いったん占領されてしまった場合は、米中戦争の危険を冒してまでアメリカが本格的に軍事介入する可能性はゼロと考えねばならない。そして、多数の長射程ミサイルが日本全土に降り注ぐ状況下で自衛隊が独力で人民解放軍を撃破する以外に、いったん取られた島嶼を取り戻す方策は存在しない。