しかし、南シナ海での軍事的優性を確保しようとする中国の努力は、なにも南沙諸島に人工島を建設し始めてからのものではない。

 ベトナム戦争のどさくさに紛れてベトナムが実効支配していた西沙諸島を、中国は1974年に軍事占領した。それ以降、南シナ海を含む太平洋全域の覇権を手にしていたアメリカが介入してこない程度の「ささいな」勢力拡大行動を、目立たないように断続的に積み重ねてきた。いわゆる「サラミ戦術」(サラミスライス戦術)である。

 中国に対して融和的なオバマ政権が誕生すると、南シナ海の軍事的優勢を一気に手にするための準備を加速させた。そして、オバマ政権の2期目がスタートすると、サラミ戦術をかなぐり捨てて、南沙諸島での人工島建設や西沙諸島での軍備強化など、露骨な勢力拡大行動を開始したのだ。

南沙諸島の現状(黄色が中国の実効支配)
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誰もが予想しなかった中国のスピード

 2014年春、中国が南沙諸島の数カ所の環礁を埋め立てて人工島を誕生させようとしているらしいとの情報が、フィリピン政府やアメリカ海軍によってもたらされた。

 当時、アメリカ海軍を含む米軍当局やホワイトハウスをはじめ国際社会の誰が、わずか2年半足らずの時間で、満潮時にはそのほとんどが海面下に没してしまうような環礁が立派な島に姿を変えてしまうと予測しただろうか? それも7つもである。