トランプ政権は、米国国防政策の基本方針を転換し、米国にとっての主敵をテロリスト集団から軍事大国すなわち中国とロシアに設定し直した。
この方針は、昨年(2017年)末から本年初頭にかけて公表された国家安全保障戦略ならびに国防戦略概要に示されていた。また、現在、米国連邦議会で最終調整中の2019年度国防予算法案(NDAA-2019)に盛り込まれている内容からも、「仮想主敵は軍事大国すなわち中国とロシア」という方針が読み取れる。
このように米国のこれからの国防戦略の根本は「大国間角逐に打ち勝つ」であり、その最大のチャレンジが「中国の軍事的台頭を押さえ込む」ことにある。
だが、現実には、中国に強力な軍事的圧迫を加えるどころか、中国が着々と手にしてしまった東アジア地域、とりわけ南シナ海での軍事的優勢を切り崩すことすら容易ではない状況である。
米国を介入させないための「サラミ戦術」
本コラムでは、中国が南沙諸島に人工島を建設して中国人民解放軍の前進海洋基地群を造り出し軍事的優勢を確実に手にしつつある状況を、2014年から追い続けてきている。同時に、そのような中国による軍事的優勢確保に対してアメリカがどのように牽制したのか(しなかったのか)に関しても、指摘してきた。