南極にあるニュートリノ観測装置「アイスキューブ(IceCube)」。氷の中にあるセンサー(下)が、飛来するニュートリノを検知する。 Image by Icecube/NSF.

 こんにちは、小谷太郎です。何だか大変に暑い夏が日本を襲っていますが、南極は真冬です。今回は南極の氷の話です。

 2017年9月、南極の氷を利用するニュートリノ観測装置「アイスキューブ(IceCube)」のチームが、ニュートリノを検出しました。そしてこのニュートリノの放射源が「TXS 0506+056」という天体であることを突き止めたと、2018年7月13日に発表しました。ニュートリノを放射するニュートリノ天体は、これを含めてまだ3例しかありません。極めて稀で重要な発見です。

 このニュートリノとは一体全体なにものでしょうか。アイスキューブとはどんな装置なのでしょうか。ニュートリノ天体はどうしてそんなに稀で重要なのでしょうか。

ニュートリノは幽霊のような素粒子です

 ニュートリノは電荷を持たず、質量が小さく、あるんだかないんだか分からない、存在感の薄い素粒子です。しばしば「幽霊のような」素粒子と呼ばれます。

 電子や原子や中性子といった、あるんだかないんだか分からない小さな粒は、宇宙にごまんとありますが、中でもこのニュートリノは特別に影の薄い存在です。

 ニュートリノの反応性は極めて低く、物質に当てても、吸収も散乱も起きず、何事もなかったかのように通り抜けます。厚さ1光年の鉛の塊に当てても、反応せずにスルッと通過するほどです*1

*1:「スルッ」と「through(〜を通り抜けて)」をかけた高度なシャレです。