86本の縦穴に埋め込まれた5160個の光センサーが、1km×1km×1kmの体積の氷を常に見張り、宇宙から到来する高エネルギーニュートリノを待ち受ける、というのがアイスキューブの仕組みです。1km^3の氷は約10億トンで、これはスーパーカミオカンデ2万台に相当します。

 アイスキューブは主に全米科学財団の予算によって2010年に建造され、米国ウィスコンシン大学マディソン校などからなる国際チームによって運用されています。

3番目のニュートリノ天体TXS 0506+056

 2017年09月22日20時54分30.43秒(協定世界時)、アイスキューブが1発のニュートリノを検出しました。290TeV(テラ電子ボルト)という超高エネルギーです。この検出イベントは「IceCube-170922A」と名づけられ、警報(アラート)が世界に送られました。

 一方、「フェルミ」というガンマ線観測衛星は地球を周回しつつ空からのガンマ線を見張っています。アイスキューブの警報を受け、その観測データを調べたところ、このニュートリノ到来方向(の誤差範囲内)にブレーザー天体「TXS 0506+056」があって、なおかつ、そのガンマ線放射が微妙に高まっていることを報告しました。

ガンマ線観測衛星「フェルミ」(左上)により、アイスキューブのセンサー(下)が捉えたニュートリノの出所は、ブレーザー天体「TXS 0506+056」(右上)と特定された。 Image by NASA/Fermi and Aurore Simonnet, Sonoma State University.

 ニュートリノ到来方向には無数の天体がごちゃごちゃ浮いていて、そのどれが本物のニュートリノ発生源なのか、それだけで決めることは困難です。しかし「ブレーザー」「放射が変動」というヒントがあると、ニュートリノの発生源はこの天体では、と推定できます。

 TXS 0506+056は、太陽と超新星1987Aに続く、3番目のニュートリノ天体ということになります。観測されたニュートリノのエネルギーはこの中で最大、けた違いに大きなものです。

 天文業界高エネルギー勢は、がぜん沸き立ちました。アイスキューブの報告するイベントが天体現象と関連づけられたのは初めてのことです。あらゆる波長のさまざまな望遠鏡が、これまで注目されたことのない天体TXS 0506+056に突きつけられました。