対象物件から同一距離の半径内に複数の駅がある場合、「2駅利用可能」として人気の高い駅が含まれる形で不動産の価値を判断することがよくある。これに対してGEEOは、道路距離が最も短い駅を最寄り駅と扱い、物件所在地が持つブランド力を不動産価格に反映する。

サービスの継続性を担保するためオープンデータを採用

 小谷氏はもともと米国の大学院でデータベースマーケティングを学んだデータサイエンティストである。不動産取引において、売り主や不動産会社に比べて限られた情報しか持たない買い主が、多額の借り入れをして不動産を購入しなければならない産業は不健全だと考え、買い主が不動産の相場観を把握する一つの指標を提供する狙いでGEEOを単独で開発した。

 その際、オープンデータを全面的に活用することにした最大の理由は、サービスの継続性を担保するためである。

 不動産の価格をAIで予測するサービスはほかにもある。その多くは、インターネット上の情報を自動収集する「クローラー」を使い、大手の不動産情報サイトから集めた物件情報を参照しているものとみられる。

 この方法だと最悪の場合、サービスそのものの停止に追い込まれる可能性がある。サイトの負荷が高まるのを敬遠する不動産情報サイトの運営者によって、クローラーによるアクセスをブロックされる恐れがあるからだ。そうなれば、価格を予測するのに十分なデータを集められなくなる。その点、官公庁や地方自治体が公開しているオープンデータは「アクセスを制限されるようなリスクがほぼない」(小谷氏)。

 GEEOは「誰もが簡単に想像できるような単純な仕組みではない」ため、まったく同じデータを使ったとしてもGEEOを「真似するのは難しい」という。それでもサービスの根幹にかかわることであるため、価格の算出に用いるオープンデータの種類、建物の種別や構造を自動判別する仕組み、統計解析アルゴリズムそのものは非公開にしている。

 小谷氏は自ら多くの文献を読んで、学術論文で立証された理論や地図画像の解析手法などをアルゴリズムに取り入れ、試行錯誤を重ねてGEEOの信頼性を高めてきた。その結果、複数の物件の市場価格とGEEOで推計したそれらの物件の推定価格をまとめて比較した際の正確度は最高で97%を達成し、高い精度で予測できるようになったという。