「見方や切り口を少し変えるだけで、すごくたくさんのビジネスチャンスがみつかる」と話すノバルスの岡部顕宏代表取締役

 2015年4月設立のIoTベンチャー、ノバルスが開発したのは「MaBeee(マビー)」、見た目は変哲のない樹脂製の乾電池ケースである。それが2016年10月、日本デザイン振興会が主催する「グッドデザイン賞」で、特に優れたデザインに与えられる金賞を受賞。2017年11月22日には、破壊的価値を創造するような偉才を発掘する総務省のプロジェクト「異能(Inno)vationプログラム」で、ジェネレーションアワード部門の特別賞を獲得した。誰も思いついたことがないような面白いアイデアと評価された。

 ほかにも、子ども目線で優れた製品やコンテンツを表彰するキッズデザイン協議会の「キッズデザイン賞」で経済産業大臣賞を受賞するなど、ノバルスに数々の賞をもたらしたMaBeeeは、単4サイズの乾電池を入れて、単3サイズの電池として使うアダプターである。もちろん単なるアダプターではない。乾電池で動く市販の玩具に装着するとスマートフォンで玩具を制御できるようになる、乾電池型のIoTデバイスだ。

 スイッチのオン/オフでしか動作を制御できないはずの自動車や電車の玩具が、スマートフォンの傾きや振りの強弱に合わせてスピードを変えながら走る。MaBeeeに内蔵した電子回路が出力制御やBluetooth通信の機能を備え、スマートフォンと通信して乾電池の出力を調整する仕組みになっている。

MaBeeeを制御するコントローラーアプリの画面

 乾電池を使う製品なら基本的に何でもスマートフォンから操作できる。その手軽さがうけて、MaBeeeの販売数量は2016年8月の一般販売開始から1年足らずで1万個を超えた。小学生から年配の大人までファンの年齢層は幅広く、ユーザーが自らMaBeeeで遊ぶ様子を動画で撮影し、先を競うように動画投稿サイトで公開している。

 このようなコンシューマー向けのMaBeeeで培った技術と知見を基に、ノバルスは企業向けビジネスにも乗り出した。「すべての製造業にIoTでビジネスチャンスを」と意気込む代表取締役の岡部顕宏氏に、MaBeeeの開発の経緯や企業向けビジネスを手掛ける狙いを聞いた(岡部氏の経歴は最終ページ)。