もしそうであれば、内需の恒久的な不振に対して、消費増税を前提にした景気対策の是非について議論してもあまり意味はないだろう。
市場に大きな動きがなければ政府は動けない?
もし内需の不振が、将来への不安要因から来ているのだとすると、今回の骨太の方針において、増税分の資金使途に関する枠組みが撤廃されたことは、マイナスに作用するかもしれない。
これまで政府は、増税による増収分については、5分の1を社会保障に充当し、残りを財政再建に回すとしていた。だが今回の方針ではこれが撤廃され、教育負担の軽減などに半分を充当し、残りを財政再建に回すことになった。
消費者の不安心理がどこから来るのかについて特定することは簡単ではない。年金や医療など社会保障に対する不安が主な原因という可能性もあるし、日本の財政について懸念する人もいるだろう。増税分の資金使途について、こうした状況をふまえた上で戦略的に決定されたのであれば問題ないが、与党内からの予算拡大の声に押されたとの指摘もある。
政府は2020年までに基礎的財政収支を黒字化するとの公約を掲げてきたが、達成は事実上、不可能となっている。今回の方針では財政再建目標の後退が明記され、黒字化の時期は2025年度までズレ込んだ。しかしながら、増税分の使途に関する制約が撤廃されたことを考えると、2025年の黒字化も難しいだろう。
今回の増税と景気対策は対症療法に過ぎず、根本的な処方箋になっていないという点では、これまでと同様である。市場に何らかの動きが発生しないことには、政府は決断できないのかもしれない。