指先の運動だけやみくもに教えるから子供はお稽古が嫌いになる。主体的な好奇心を刺激して、自分からやる気にさせれば、五輪選手みたいな栴檀が双葉から芳しくなっていく。

 もっぱら、大味で無内容な教育が、子供の伸びる芽を奪っているわけで、そうではない具体例を「九九」に例をとって考えて見ましょう。

「九九の手品」

 加減算ができるようになった子供に九九を教えるとき、先ほどの銭湯のお父さんのように丸暗記させるのも一つの方法で、微笑ましく、お風呂での親子のコミュニケ―ションには何の文句もありません。

 しかし紙と鉛筆をもって数理を考えるときは、ほかの遊び方もあるよ、というわけです。

さっきの9の段

1・9=9
2・9=18 の10の位:1と 1の位:8 を足すと 1+8=9 
3・9=27 の10の位:2と 1の位:7 を足すと 2+7=9 
4・9=36 の10の位:3と 1の位:6 を足すと 3+6=9 
5・9=45 の10の位:4と 1の位:5 を足すと 4+5=9 

 確かに、全部9になっている。どうしてでしょう?

 と子供に訊いてみるわけです。興味をもったらしめたもの、「証明できる?」となれば、これはすなわち、完全に数学の入り口に入ることになります。

 上のような初等的なやり方の延長でも、一つの証明は可能です。小学校低学年には、その方が分かりやすいでしょう。