前回は「歯ブラシ」の話題だったが、今回は「うがい」を取り上げてみよう。「うがい」の風習はいつからどこにあったか?

 源義経や弁慶はうがいをしたか? シーザーは? ツタンカーメンは「ごろごろ」と喉をゆすぐ習慣があっただろうか? そして「聖徳太子」は歯磨きやうがいをしただろうか?

「うがい」の語源は長良川の鵜飼だった

河渡 長柄川鵜飼 (木曽街道六十九次) 渓斎英泉作。岐阜県博物館所蔵(ウィキペディア

 日本語の「うがい」は「鵜飼い」から来た言葉らしい。

 長良川の「鵜飼い」は首に輪をつけた鵜を川に放って魚を飲ませる。それを吐き出させるわけだが、これと同じように、水を口に含んでガラガラとやったあと吐き出すことから、「口腔洗浄」にもこの名前がつけられたらしい。

 この点、英語は分かりやすい。ガーグリング「Gargling」=ガラガラやるやつ、というわけだ。英語の表現にはこんな具合で案外ナイーブなものが多い。

 擬音そのままで、あえて言うなら日本語で幼児に「はい、ガラガラ・ペッ しましょうね」と言うようなものか。

 ドイツ語もグーゲルン「Gurgeln」で似たようなものか、と思うと、「首」のことをグーゲル「Gurgel」と言うので、そこから来ている面もあるかもしれない。

 しかし「喉がいがらっぽい」みたいなところから、そもそも首を表す言葉が出てきた可能性も考えられ・・・なかなか分かりにくいものだ。

 音声言語の原点は実は擬音にあるし、文字の原点は象形文字にある。私たちは日ごろ「アルファベット」を「表音文字」と考えているが、例えばAは横から見た牛の顔、bは足、C(Γ)はブーメラン・・・といった具合に古代アフリカの象形文字に起源をたどることができる。

 エジプトの神聖文字(ヒエログリフ)やフェニキア文字、カナン文字など、ギリシャ文字の祖先たちをたどれば、d,e,f,g…といった形象たちが、実に表情豊かな元来の姿、絵文字の横顔を持っていることが分かる。