いきなり突然、で大変恐縮なのだが「歯ブラシ」の起源って何だと思われるだろうか?

 いま私たちは、朝一番から夜寝る前まで歯を磨くのが普通になっている。では明治時代はどうだったのだろう? あるいは江戸時代は、歯を磨いていたのか?

 もっと時代をさかのぼれば、聖徳太子や卑弥呼は、歯を磨いていたのか・・・何となく、怪しい感じがするかもしれない。

 いや、グローバルな21世紀のことである。もっと広く世界に目を向けてみよう。ナポレオンは歯を磨いたのか? あるいはクレオパトラは歯磨きしたか? 秦の始皇帝は歯を磨いていただろうか・・・?

 こんな身近な習慣から、意外な世界の構造が見えてくることが、実はある。

道元も歯ブラシを使った!

道元(ウィキペディア

 米国の歯科医師会は、歯ブラシの起源を1498年「中国の皇帝」が作らせたもの、と記しているという話を聞いて、ははあん、典型的だな、と思った。何が典型的か、は後で記すことにしよう。

 1498年と言えば明の時代、孝宗弘治帝の時代のことだ。歯ブラシを作らせたというこの皇帝が弘治帝なのかどうかは分からなかった(がそれは実はどうでもよいことでもあるのだが)。

 「中国の皇帝は豚の毛を骨に刺して歯を磨くブラシを作らせた」

 と米歯科医師会は記しているという。すると、14世紀以前には歯磨きの習慣はなかったのだろうか。

 いまここにとても面白い記録がある。道元といえば鎌倉時代の高僧で、中国に留学したことが知られるが、こんなことを記しているのだ。

 「くちすすぐともがらは、馬の尾を寸餘にきりたるを牛の角のおほきさ三分ばかりにて方につくりたるがながさ六七寸なる、そのはし二寸ばかりにうまのたちがみのごとくにうゑて、これをもちて牙歯をあらふ」