『トゥーランドット』は、イタリア人のプッチーニ作曲の世界を代表するオペラ。イタリア人の世界的テノール歌手、ルチアーノ・パヴァロッティの十八番で、トリノオリンピック開会式では、彼がそのアリア「誰も寝てはならぬ」を熱唱、イタリアを代表する国民的な曲として知られる。

 イタリア人がよく知っている曲だからこそ、本当は難しい。彼らの心の奥底に熱く、深く響く表現者としての高度な演技が求められるからだった。

 「ビンチェーロ(私は勝利する)!」(イタリア語)と雄たけびをあげる最後の歌詞とともに、完璧な演技でフィニッシュしたかつての氷の女王、荒川に会場は、同オリンピックを通じ、初めてのスタンディングオベーションで、その華麗な勇姿を心から称えた。

 「ブラボー(最高だ!)」の声が鳴り響き会場が大きく揺れるその瞬間は、荒川が不死鳥のごとく、氷上に女王となって再び帰ってきた瞬間でもあった。

10年経ってもバンブーシーリングが露呈

 日本はちょうど真夜中だったが、メダルが1つも取れず劣勢を強いられていた日本勢に、最後の最後で1点の輝かしい光を当て、荒川の世界一の舞いが、唯一のメダルを日本にもたらしたことでも、記憶に新しい人は多いだろう。

 「ロシアと米国以外の金は、採点の不公平さから無理」と言われてきたが、アジア選手として、五輪フィギュアスケート史上初のオリンピック制覇という偉業を成し遂げた荒川。

 欧米勢が独占するISU組織、スケート関係競技者に、日本人の真の強さを見せつけた瞬間でもあった。筆者も、今でも、その瞬間を思い出すと胸が熱くなる思いを抑えられない。

 あれから、10年以上が過ぎた今、オリンピックのフィギュアスケート界には、残念ながら、いまだこのバンブーシーリングが露呈する。

 平昌オリンピックでは、団体予選で日本のエース、宮原知子が結果的に4位となったものの、日本だけでなく、世界から次々と不満の声が上がった。

 「ミヤハラ(得点)は盗まれたとしか言いようがない」「心から感動した。あのスコアには全く正義が感じられない」「陰謀だ。ジャッジたちは自分が何をしているのか、分かっているのか」

 SNSは大炎上。今でも採点に疑問を呈する声が後を絶たない。