“自給的”肉食を2年間続けた女性が発見したこと

『生き物を殺して食べる』で食の方法を見つめ直す

2018.01.12(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
肉が食べられるまでには、肉ごとの工程がある。その始まりには生き物がいる。

 日本では長らく“肉ブーム”が続いているようだ。1人あたりの年間消費量は右肩上がり。農林水産省の「Monthly食肉鶏卵速報」によると、2016年の1人あたりの肉の年間消費量(概算)は、牛肉が6.0キログラム、豚肉が12.4キログラム、鶏肉が13.0キログラムだったという。

 肉をよく食べる。それは、私たちがいとも簡単に肉を入手できることの表れだろう。巷は肉で溢れている。だが、もしこの肉を、自分自身で生き物を殺し、捌き、切って、煮て焼いて、食べるとしたら、どれだけの手間がかかるだろう。そしてどんな感覚を抱くだろう・・・。

 そんなことを考える人は多くはいまい。ましてや実践するなんて・・・。ところが、2年にわたりそれを試みた非狩猟業の人物がいる。『生き物を殺して食べる』という本の著者だ。

獣を狩り、食肉解体の現場を訪ねる

2017年12月に刊行された、ルイーズ・グレイ著、宮﨑真紀訳『生き物を殺して食べる』。原題は“The Ethical Carnivore”(道徳的な肉食者)。

生き物を殺して食べる』は、英国人の環境ジャーナリストであるルイーズ・グレイが、2014年7月から2年間、ほぼ自分で鳥獣や魚を屠ることで肉食を貫いた経験をまとめたもの。彼女はその動機を<平気な顔でぱくぱく肉を食べるような無神経な人間にはなりたくなかった><自分で殺した動物だけを食べるというのがいちばんまっとうなやり方に思えた>と述べる。

 ウサギ、ハト、キジ、ニジマス、そしてまたウサギ・・・著者は自身での狩りの成果を綴っていく。狩りから食までの生き生きとした描写で、読者は自給による肉食を疑似体験できる。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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