“自給的”肉食を2年間続けた女性が発見したこと

『生き物を殺して食べる』で食の方法を見つめ直す

2018.01.12(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 だが、それだけではない。豚や牛の屠畜場、養鶏場、サケの養殖場などを取材し、動物たちが解体されていく様子を目の当たりにし、それらも描写する。<豚が大型剪定ハサミぐらいの大きさの電気ゴテで頭を挟まれ、ほとんど抵抗もせずにすぐ倒れたが、念のためにもう少し長く電流は流される>といった具合に。<二度と見たくない>とも書いた。だが、屠畜業者の<ここにいるみんなはどうしたらいい? ここで屠畜される動物たちは人道的に扱われていると、俺は一〇〇パーセント確信している>といった声にも耳を傾け、伝える。

エネルギー効率と気候変動という視点からの肉食是非

 筆者もそうだが、肉食について深く考えることなく生活を送っている人は多いだろう。読者に立ち止まって考えてもらうため、著者はいくつかの論点を提示する。

 1つは、肉食の効率の悪さ。たとえば牛肉は、おなじ熱量のベジタリアン食を作るのに使うエネルギーの10倍を要するという。また、豚の飼料要求率(体重1キログラム増に必要な飼料量)は4、鶏は2.2といった数値も示す。簡単には行かないだろうが、穀物を飼料用でなく食用にすれば、より効率よく人はエネルギーを得られることになるというわけだ。

 また、口から出すメタンガスなどにより、家畜が温室効果ガスの大きな原因になっているという話も持ち出す。英国の王立国際問題研究所が2015年に公表した報告書『Changing Climate, Changing Diets』(気候を変えたいなら食事を変えよう)を紹介し、家畜の温室効果ガス排出量は「全世界の飛行機、車、列車をひっくるめた数値より高い」と述べる(ただし報告書では「同等(equivalent)」との表現も見られる)。

 こうした情報は、たしかに肉を食べる人々の手を、少しだけ止めるかもしれない。

「野生を剥奪している」

 だが、本書における著者の主張としてもっと大きいのは、そしてこれは最も言葉で説明しづらい主張でもあるのだが、今の人間がしている肉食の方法が、あまりに自然の状態から乖離してしまっている、というものだ。それは理論的に導かれる主張というより、人として抱く違和感からくる主張と取れる。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。