しかもスクランブルには、航空自衛隊が約100機しか保有していない近代化改修済みのF15(残りのF15はガラケー並みの性能で、まともに戦闘できない)も投じられている。つまりスクランブル対処は、豊富な物量と資金を誇る中国空軍に対して、貧弱な物量と予算の自衛隊が航空自滅戦をやっているようなものなのだ。

 実際、「自滅」の兆候は出ている。2017年、那覇基地では報道されているだけでも2回の事故が発生した。そのうちの1回は、降着装置が金属疲労で故障するというもので、機体の老朽化の進行をうかがわせる。

 また、元空将の廣中雅之氏も日米エアフォース協会の機関誌で、「冷戦時代には大きな抑止力となった対領空侵犯措置も、核搭載可能な長射程空対地ミサイルを装備するロシア、中国の戦闘爆撃機の配備は、航空自衛隊の対領空侵犯措置の軍事的な効果に根本的な疑問を投げかけています。(中略)航空自衛隊はより高度な戦闘能力の向上を期すために、これまで任務の中核であった対領空侵犯措置に係る体制の抜本的見直し」が必要、と発言している。廣中氏も、対領空侵犯措置の抑止効果が低下しており、あり方を見直す必要があると述べているのである。

ミサイル防衛は費用対効果に見合っているのか

 こうした日本に不利な費用対効果は、挙げればきりがない。

 北朝鮮専門メディア「デイリーNK」の報道によれば、北朝鮮の弾道ミサイルはスカッド5.6億円、ノドン11億円、ムスダン22億円であるという。こうしたミサイルが1発発射実験されると、防衛省・自衛隊に多大な負担がかかる。Jアラート発令によるインフラ停止等に伴う日本の経済的損害も甚大である。

 そもそも「PAC3」ミサイルの展開だけでも人員が疲弊し、予算がかかる。というのは、移動には手間を要するし、用地取得に膨大な資金と手間がかかるからだ。PAC3ミサイルの発射が許され、迎撃ポイントとして最適地であり、ミサイル発射時に自由に使用できる土地はそうそう存在しない(高知と都内の場合は、防衛省自衛隊施設が存在したが)。展開予定地域の地方自治体との事前調整や、展開候補地の地権者との調整には多くの労力が割かれるという。しかも、野党の要望もあり、島根・広島・愛媛・高知のような過疎の地方への展開が近年増えている。北朝鮮が貴重な弾道ミサイルでそんなところを狙うわけがないし、仮に部品等が落下したとしても人的被害が発生するのは天文学的確率の低さであろう。

 地上配備型ミサイル迎撃システム「イージスアショア」も日本を消耗させる一因である。2017年12月、イージスアショアの調達が閣議決定されたが、当初の1基800億円の説明から1000億円に膨れ上がり、佐藤正久参議院議員が指摘しているように、最終費用がさらにこれを上回ることは間違いない。運用担当の人員も当初の説明では1基100人だったが、陸自は600人が必要と見込んでいるという。だが、イージスアショアは迫撃砲や民生ドローンでレーダー類を破壊すれば簡単に機能停止に追い込める。現状では自衛隊に民生ドローンを撃墜する権限はない。つまり極論してしまえば、北朝鮮や中国の工作員が10万円で破壊することも可能なのである。