クラウドファンディングで医療をつなぐ

 周囲に相談していたところ、クラウドファンディングという資金調達の手法を知り、先駆企業であるReadyforを活用し、11月下旬に、研究支援のプロジェクトを立ち上げた。

 勝沼医師は、研究を続けるために1年間に最低限必要な1000万円を、当面の目標金額に設定した。クラウドファンディングのメリットは、より多くの人に課題を知ってもらい、広く理解と支援を募ることができること。研究の意義をできるだけ分かりやすく伝え、一般市民の共感を誘い、「応援したい」と思ってもらうことが重要だ。Readyforの担当者と何度も意見交換を重ね、プロジェクトの概要と支援を募るページを立ち上げた(https://readyfor.jp/projects/difto)。

 ぜんそくの娘を持つ母親であり、都内の企業にフルタイムで勤務する山﨑由美さんは、「娘は吸入を嫌がることが多く、母として不憫に思いながらも説得し、吸入させているので、毎日行う必要がないことが分かれば、母子ともに心身の負担が減り助かります」とプロジェクトへの期待を語る。

 勝沼医師自らも12年前、2人の息子がまだ幼いうちに妻を肺がんで亡くし、母親役も務めながら、当時ぜんそくを患っていた次男のケアを経験した。この研究を完遂させ、成果を出すことができれば、ぜんそくに悩む子どもたちの薬を減らすことができ、副作用の不安や薬を投与する負担も軽くできるとともに、保護者らの子育て環境も改善でき、益は大きいと確信している。

研究に取り組む、勝沼医師(左から2番目)とチームの皆さん。

 このプロジェクトのチャレンジは2018年の1月31日まで。チャレンジ期間内に目標金額の1000万円が集まらなければ、支援は成立しない仕組みで、寄付金は支援者に返金される。このプロジェクトが一般市民から、どのくらいの理解と支援が得られるのか注目したい。

 社会的に意義があるにもかかわらず、公費で支えきれない研究を民間の力で完遂させることができたなら、これからの医療の未来はもっと明るくなるに違いない。