裁判でテレビを設置した日をNHKが確定できれば受信料を請求できるが、年額1万3000円程度の料金にそんな手間をかけることは費用対効果が見合わない。いちいち訴訟を起こさないと徴収できない公共料金とは何だろうか。NHKは公共放送といえるのだろうか。

NHKは国営でも民営でもない宙ぶらりん

 最高裁判決は放送法の受信契約の規定については「立法として憲法上許容される」と判断した。この意味でNHKの勝訴だが、その理由は複雑で分かりにくい。今の奇妙な経営形態になった原因は、終戦直後にさかのぼる。

 GHQ(連合国軍総司令部)は戦時中に国策に協力したNHKを解体しようとしたが、日本政府が反対し、戦後のNHKは電波監理委員会のもとに置かれる特殊法人という形で発足した。電監委はアメリカのFCC(連邦通信委員会)のような独立行政機関だったが、占領が終わると解散され、NHKは郵政省の直轄になった。

 このように政府が放送を直轄している国は先進国には他になく、NHKの実態は国営放送に近い。自民党政権はあまり直接介入しない方針を取ってきたが、毎年2月のNHK予算の承認のときは全会一致が原則なので、野党も含めてNHKの「国会担当」が根回しをしなければならない。

 受信料を「視聴料」と誤解する人がいるが、視聴した人だけが払うなら分かりやすい。スカパーのような有料放送は、料金を払わないと電波を止められる。これは電気代や電話料金などの公共料金と同じで、電力会社が電気代を利用者に請求する必要はない。電気代を払わない人には電気を止めればいい。

 ところがNHKの電波は誰でも受信できるので、見ても見なくても払わないといけない。テレビ放送が始まった1950年代には、特定の人に電波を止めることができない「公共財」だったため、テレビを買った人はすべて(NHKを見ても見なくても)受信料を払う制度にせざるをえなかったのだ。

 法的に不安定な受信料制度には、昔から批判が強い。NHKも不払い者から罰金を徴収するBBC(イギリス放送協会)のような規定を設けようとしたが、うまくいかなかった。自民党としては、国営でも民営でもない宙ぶらりんの状態のほうが口を出しやすいのだ。