公共放送としての報道の姿勢が問われるNHK

 NHKの女性記者の過労死が、世界各国のニュースメディアに大きく報じられた。米国でも大手の新聞やテレビが詳しく報道した。日本の企業や組織が個人の健康や生活を軽視する風潮を、一種の日本独特の「文化」として描く報道が多いようである。大多数の報道が、電通の女性社員の過労自殺と合わせる形で日本論を展開していた。

 しかし、この国際報道の高まりのなかで、当事者のNHKは、電通の事件を詳しく報じながら自組織の女性記者の悲劇をあまり丁寧には伝えようとしない。

米国の大手メディアがNHKを批判

 NHKの女性記者、佐戸未和さん(当時31)が2013年夏に長時間労働の結果とみられる心不全で死亡した事件の発覚は、米国で10月5日に主要な新聞やテレビにより一斉に報道された。

 ワシントン・ポストは同日付の「死ぬまで働いた若い日本人記者の困難な事例」という見出しの記事で佐戸記者の過労死を詳しく報道した。

 この記事は佐戸記者が4年も前に死亡して、その原因が過労だということが分かっていながら、雇用者のNHKがその情報を隠し続けたことを、公共放送の態度としてはおかしいという批判的なトーンで伝えていた。そのうえで、NHKの一員が「年来、私たちの組織は労働システムや選挙報道のあり方に問題があり、今回の事件もその結果だ」と組織を批判する言葉を紹介していた。

 さらに同記事は、「苛酷な長時間の労働や、仕事の後の社交活動は長年、日本独特の労働文化である」と断じていた。そして、時間外労働を当然とする日本の文化は、1970年代、雇用者に加えて、賃金が低い労働者が収入を増すために時間外労働を求めたのが出発点だと解説していた。