加熱ムラはなぜ起こる? 電子レンジを学び直す

普及率9割以上! “火を使わずに超速調理”の仕組みとは?

2017.12.01(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

 一方、電子レンジではマイクロ波のエネルギーは器を通過し、直接水に吸収される。そして、そのほとんどが温度上昇に使われる。そのため、電子レンジでは素早く温めることができるのだ。

 ただし、「表面は熱いのに中はまだ冷たい」という加熱ムラが生じるのが難点だ。ターンテーブルは、加熱ムラをなくすために工夫されたものである。

 物質にはマイクロ波を透過するもの、吸収するもの、反射するものがあり、そのうち吸収するものが発熱する。物質によって発熱のしやすさが異なり、温度によって違いはあるが、発熱しやすいものほどマイクロ波の届く深さは小さくなる。そのため、食品の成分が均一でない場合は加熱ムラが起こりやすいのである。

 たとえば、水と食塩水を比べると食塩水のほうが発熱しやすく、マイクロ波の届く距離が短い。そのため、食塩を含む食品では端に近いほうが加熱しやすく、中のほうは加熱しづらい。一方、油は発熱しにくく、マイクロ波の届く距離が長いので、少量では加熱しにくい。

 また、氷はマイクロ波をほとんど吸収せず、透過させる。そのため、冷凍食品を解凍するときに、溶けかかったものを電子レンジで加熱すると、水の部分は一気に温度が上がるのに氷は温度が上がらないことになり、加熱ムラが起きてしまう。

 アルミ箔製の容器や金線の模様の入った食器を使って電子レンジで温め、パチパチと音がしてびっくりした経験のある人もいるのではないだろうか。これは金属がマイクロ波を反射するからである。パチパチいうのはアルミホイルの角などにマイクロ波が集まり、電子レンジの庫内の壁にとの間でスパーク(放電)を起こすためである。

原理を理解して上手に使いこなす

 電子レンジはとても便利な調理器具で、私たちの食生活に電子レンジは欠かせない存在になっている。そのため、電子レンジで簡単に調理できる冷凍食品や電子レンジ向け調理用品がたくさん発売されている。各メーカーとも電子レンジの性質をよく研究して、開発されたものだ。

 電子レンジ自体もさまざまな機能が向上し、便利になっている。ただし、電子レンジはマイクロ波で加熱するという、他の調理器具とは仕組みが異なるもの。ちょっとした勘違いで思わぬトラブルが起こることもある。原理を理解し、上手に使いこなしたい。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


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