加熱ムラはなぜ起こる? 電子レンジを学び直す

普及率9割以上! “火を使わずに超速調理”の仕組みとは?

2017.12.01(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

 家庭に普及したのはそれから10年ほど経って、低価格のファミリータイプのものが発売されてから。それでも当時は10万円近くもした。

電子レンジで使うのは火でなく電磁波

 電子レンジが登場し、人々が一番驚いたことは、火を使わないで加熱できるということだった。ガスや電気などの熱源を使った加熱では、外からの熱を食品に伝えることで加熱するが、電子レンジでは食品自身を発熱させて加熱する。

 その仕組みは、電子レンジにある「マグネトロン」という装置で発生させたマイクロ波を食品に吸収させるというもの。マイクロ波は、電磁波の一種でレーダーや衛星通信など通信用に使われることが多い。周波数では300MHzから300GHzまでの範囲をさすが、日本の電子レンジでは周波数2450MHzのマイクロ波が使われている。これは、マイクロ波の中では、「地デジ」や携帯電話、GPS(全地球測位システム)などと同じ極超短波(UHF)に分類されている。

 食品を電子レンジで加熱すると、マイクロ波は電子レンジ庫内に充満しながら食品内部に入り、食品中の水分に吸収される。水は、分子内に負電荷と正電荷を帯びた部分があり、あちらこちらの方向を向いているが、マイクロ波を吸収すると、交流の電場に置かれたことと同じになる。

 周波数2450MHzとは、プラスとマイナスが1秒間に24億5000万回入れ替わることであり、頻繁に電場が入れ替わるたびに水分子も向きを変える。その過程で周囲の分子の抵抗を受けるなどして水分子の動きが電場の変化に付いて行けなくなり、マイクロ波のエネルギーの一部が熱エネルギーになって失われる。その熱によって、食品の温度を上昇させるのだ。

飲み物を電子レンジで加熱しているところ。吸収されたマイクロ波のエネルギーが熱エネルギーとなり、飲み物や食材の温度が上昇する。

素早く温められるが加熱ムラが難点

 電子レンジの特徴はスピーディーに加熱できることだが、それもマイクロ波の性質による。

 たとえば、湯煎で食品を温めようとすると時間がかかる。それは、ガスコンロの熱を鍋から水へ、水から食品の表面へ、さらに食品の表面から内部へと伝えて、温度を上昇させるからだ。さらに、ガスコンロの熱効率は50~80%ほどといわれ、お湯を介して食品に伝わる熱エネルギーは少なくなってしまう。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


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