3Dプリンタによる兵站革命は新次元へ

 また、こうした構想と並んで海兵隊が強力かつ急速に推進しているのが3Dプリンタの軍事転用である。海兵隊の3Dプリンタ活用はドローン、AI、ブロックチェーンといった最新のテクノロジーと結び付けることで新たな段階へ踏み込みつつある

 海兵隊がこれほどまでに3Dプリンタの導入を目指す理由は、第1に、海兵隊が旧式兵器を抱えた組織だからである。要するに、補充が難しい装備を抱えているということだ(これは自衛隊も同様である)。海兵隊の担当者は、「金属製部品の製造は数週間から数カ月かかっていたが、3Dプリンタならば数時間で可能だ。これによって海兵隊の侵攻作戦は一気に容易になる」と述べている。

 そしてもう1つの大きな理由は、中国等の現実の脅威への対応である。中国軍はA2/AD戦力を強化することで、米軍の前方展開拠点と本国からの来援を防ごうとしている。つまり米軍にとっては、有事の際に破壊された部隊や装備を早急に回復するための補給が困難になるということである。最初に述べたように、中国軍はミサイル戦力だけで在日米軍を壊滅することが可能だ。となれば、米軍が3Dプリンタという兵站革命に力を入れるのは当然であろう。米空軍も2019年に3Dプリンタ製部品を積載した軍事衛星を打ち上げる予定だが、これも短期間で生産することで中国などの衛星破壊に対抗するためである。

 では、実際にどのような取り組みが行われているのだろうか。

 第1に3Dプリンタをドローンと組み合わせることだ。海兵隊は今夏にも、3Dプリンタで生産した偵察用ドローン「ニブラー」を実戦配備する予定である。これは前線で生産可能であり、随時新しい部品にアップデートすることができる。将来的には偵察以外のドローンも同じ方式を導入していくとされ、まさに相手の物量には3Dプリンタによる物量で対抗しようというのである。

 また、3Dプリンタでよく問題視されるのが、生産データの流出である。つまり、サイバー攻撃等で生産データが盗まれると、相手側がそのまま同じ兵器を生産できてしまう危険性があるのだ。

 この対応策としては、ビットコインやフィンテック等に使用されている「ブロックチェーン」技術(P2P技術を活用してデータを分散管理する技術)の導入が国防総省全体で進められている。ブロックチェーンで3Dプリンタデータを保護する取り組みは、DARPA、米海軍のDON Innovatorが既に試験を開始している。米海軍はこの夏に試験を実施し、9月に詳細な報告を発表する予定だという。この試験によって生産データ流出問題の解決に一定の目途が立てば、3Dプリンタはより導入が本格化するだろう。