2016年11月HOSPEX会場にて、ソレノイドを手にするタカハの取締役執行役員・大久保千穂さん(左)

 日本が誇るメカトロニクスの技術を生かして医療分野へ参入し、面白い製品を生み出している企業を2社、前回はご紹介した。まさに医工連携は日本の未来にとって宝の山とも言える分野である。

 今回は、やはり日本が得意とするアクチュエーターで医療分野を攻めようとしている企業を紹介する。在庫は減らすのではなく、生かすというユニークな経営を実践している企業でもある。

 自動販売機のコイン制御やレジの開閉などに使われる駆動部品を製造・販売しているタカハ機工(福岡県飯塚市)。

 この典型的なもの作り企業が、ある病院から持ち込まれたニーズに対応しようと、初の医療もの作りに挑戦している。従業員の意欲を高めるようになったこの社ならではの発想や取り組みを紹介する。

病院の点滴管理に、自販機の部品を使うアイデア

 「モーターと同じくらいの認知を得たいのです」と話すのは、タカハ機工の取締役執行役員を務める大久保千穂さん。彼女が世に知ってほしいと願うのは、同社のソレノイドと呼ばれる部品である。

 ソレノイド(solenoid)は、筒状の形を意味することから名づけられた製造業界ではお馴染みの部品。モーターと同じように電気エネルギーを機械運動に変換する装置、アクチュエーターだ。

 モーターが回転運動なのに対し、ソレノイドは筒状に巻かれた銅線に電流を流すと、筒の中の鉄の芯棒が直進運動をする。押すか引くかの1方向の動作をするものが主流で、元に戻すためにバネが装着されているものもある。

 最近、大手コンビニエンスストアやスーパーでは自動釣り銭レジが登場し、お金を入れたキャッシャーが手前に飛び出す光景をあまりみかけなくなった。しかし、一般の商店などで普及している昔ながらの手動レジにはキャッシャーを引き出すために欠かせない部品だ。

 支払い時、お金を受け取ったレジの店員がボタンを押すと、キャッシャーが開く。お釣りを渡した後に手で押し戻すまで、開放されたままになる。この動作をするのがソレノイドだ。

 自動販売機内のコインの移動などにも使われるが、外からは見えない部品だけに、一般にはあまり知られていない。

 そのソレノイドを使って、タカハが製造に挑戦しているのは、病院で患者さんの点滴をセンサーの信号を受けて自動的に止める「流体ストッパー」。