1996年の台湾総統選挙の時に、中国は台湾近海に4発の弾道ミサイルを着弾させて選挙を妨害しようとした。これに対し米国は空母2隻を近海に派遣したが、これによって中国は矛を収めざるを得なかった。

 中国は空母派遣によって米中戦争になるとは思っていなかっただろう。だが、「最悪事態」を想定すれば、力の誇示を続けることによって自分に不利に作用すると考え矛を収めたに違いない。

 今回の米軍の動向も、決して無駄ではないし、いつでも「やるぞ」との意思を示すことは外交の力強い後ろ盾となっていることは間違いない。逆にいえば「力の後ろ盾」のない外交は無力なのである。

 以上が「楽天的に過ぎる」との御批判への筆者の回答である。要はパブロフの犬のように、条件反射的に反応するのではなく、情報を見極め、動くべき時に動き、そうでないときに軽挙妄動してはならないということだ。

朝鮮半島の非核化は話し合いで解決できない

 もちろん事実を直視せず、楽観を決め込むことがあってはならない。だが「すわ戦争だ」という根拠なき悲観論に右往左往するのも有害極まりない。またぞろ壊れたレコードのように「話し合いを」と繰り返し、思考停止に陥っている楽観論も百害あって一利なしだ。

 2003年から9回にわたって繰り返された六か国協議の「話し合い」で、果たして「朝鮮半島の非核化」は実現できたのか。1994年の核疑惑危機から23年にわたる「話し合い」の結果が今の状況だということをまず直視する必要がある。

 金正恩総書記の「核・ミサイルの野望」を止めさせるには、もはや「話し合い」だけでは無理である。いざとなれば「伝家の宝刀を抜くぞ」という本気度を示して初めて可能性が出てくる。今回の米軍の動きは、そのための第1弾としての力の誇示であり、まずは習近平主席の働きかけと金正恩総書記の決心を見てみようということだ。

 それがだめなら、第2弾としてNEOを開始して本気度を示すだろう。NEOの開始は金正恩総書記に対し、相当インパクトの大きいメッセージとなる。

 併せて攻撃部隊を集結させて金正恩総書記に決心を迫る。もちろん国際社会での合意形成を得る努力は必要である。同時並行的に「核とICBM」を断念させる交渉を中国に引き続きやらせる。それでもだめなら・・・今後は、そういった展開になるだろう。

 日本は当事者意識を持たねばならぬ。北朝鮮の核・ミサイルは米国だけの問題ではない。日本の安全保障そのものなのである。

 70年前、講和条約の調整で来日した大統領特使ジョン・フォスター・ダレス氏が、あまりに国際情勢に疎い日本を「周辺情勢に目をつむり、まるで不思議な国のアリス」と言って嘆息したという。

 日本人は70年前と全く進歩していないのか。我々は「お花見」よろしく車座になって外界に背を向け、内輪だけ通じる議論に終始している場合ではないのだ。