ロボットや人工知能(AI)は人々の仕事を奪うというのが一般的な常識となっている。ところが経済産業省はこれとは正反対に、「ロボットやAIを導入しないと2030年までに735万人分の雇用が失われる」との試算結果を公表した。
一部メディアはこれを誤解し、ロボットの導入を進めると735万人分の仕事がなくなってしまうとうニュアンスで報じた。これは誤報に近いものかもしれないが、ロボットやAIの導入で仕事が増えると言われてもピンとこないのが正直なところだろう。
試算結果の是非はともかくとして、今回の試算が、ロボットやAIがもたらす影響について議論するための叩き台となることは間違いない。すでに始まりつつあるロボット社会に対してどう向き合えばよいのか、もっと俯瞰的な議論が必要である。
経済産業の試算について一部メディアは誤報?
経済産業省は4月27日、第4次産業革命に対応するための指針となる「新産業構造ビジョン」の中間整理を発表した。中間整理では、ロボットやAIが雇用にもたらす影響について試算を行っており、それによると、ロボットやAIをうまく活用できなかった場合、2030年までに働く人の数は735万人減少するという。一方、ロボットやAIの活用が進めば161万人の減少で済むとしている(中間整理の21ページを参照)。
一部メディアは「AI・ロボで雇用735万人減」という見出しを付け、AIやロボットの導入で仕事がなくなるというトーンで報じていた。内容をほぼ正確に報じていたのは日本経済新聞くらいであった。
詳しくは後述するが、経済産業省が実際に試算した内容を考えると、雇用が735万人分減少するというタイトルは、読者をミスリードしてしまう可能性がある。