宇宙は「ひも」でできている

――では、「万物の理論」では、どのように世界を表現するのでしょう。

ディミ 万物の理論の仮説として、『9次元からきた男』で紹介している超弦(超ひも)理論によると、物質を構成する最小単位は素粒子(点)ではなく、1次元的に広がる「ひも」であるとしています。1次元だから長さしかありません。エネルギーのひもなのです。

ひもで満たされた世界。端が閉じているひもも、閉じていないひももいる。(c)Miraikan

――エネルギーのひも?

ディミ 物理学の方程式から導かれる、波打ったり形を変えたりする何かを、「ひも」と便宜的に呼んでいます。方程式の言語と私たちの言語を近づける必要があるので、何か言葉を使わなければならなかったのです。

 標準模型の17個の素粒子が、ひもの振動パターンの違いに対応します。今までの素粒子は、すべてひもに置き換えることができます。17個の違う種類だったものを、1種類のひもにまとめてくれるのです。

 なぜ素粒子が17個なのか、なぜその性質を持っているのか、標準模型は教えてくれません。実験して計算しないと分からないという弱点がありました。超弦理論によると「ひも」の違いは振動パターンの違いなのです。つまり振動のパターンが分かれば、すべての性質がどうなっているか分かるのです。

――そのひもは何からできているのですか?

ディミ ひもは何からできていると聞くと、ひもはもっと基本的な何かでできているということが暗示されています。

 たいていの場合、「これは何でできているか」と聞いてもいいです。たとえば、砂糖は分子でできています。分子は原子でできています。原子は電子、陽子、中性子でできています。陽子と中性子はクォークでできています。クォークと電子はひもでできています。

 しかし、ひもは最も基本的な単位と考えられています。何かでできているのではなくて、すべてをつくりあげるのです。