2016年2月17日(日本時間)に打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ」について、前回の記事「空前絶後の高精度、日本のX線天文衛星がすごすぎる 30年来の期待を乗せて『ひとみ』が宇宙に飛び立った」にてご紹介しました。
しかし続報はきわめて痛ましいものになりました。観測機器が順調に立ち上がり、試験的な天体観測を始めた矢先の3月26日、軌道上のひとみに異常が発生し、通信が途絶しました。
地上のレーダーや望遠鏡をひとみに向けたところ、いくつもの破片が飛び散り、本体はくるくる回転していることが分かりました(人工衛星のトラブルの状況がこうして地上から観測されるのは異例です)。過去の科学衛星が経験したことのない、深刻で過酷な事態です。
人工衛星は飛行機と違い、何かあっても地表に墜落はしません。軌道を周回することが、すなわち落下の状態だからです。したがってひとみは現在も地球を周回しています。ひとみが基地局の上空を通過するたびに、通信が試みられていますが、今のところひとみからの電波は受信できていません。
いったいどんなトラブルがひとみを見舞ったのでしょうか。
第1段階:「ひとみ」が姿勢の判断を誤り、ゆっくり回転していると誤認
JAXAは4月15日、ひとみに起きたトラブルが推定できたと発表しました。ここではその発表を、分かりやすく解釈して説明します(JAXAの発表そのままではありませんので、誤読やミスリードの責任は筆者にあります)。