9月28日の米紙ウォールストリート・ジャーナルは、米連邦公開市場委員会(FOMC)が準備を進めているとみられる国債買い入れ増額という追加緩和策について、2009年3~10月に総額3000億ドルで実施したのとは異なる「新しい戦術(new tactics)」が徐々に支持を得ていると報じた。

 最初に期限を決めて巨額の買い入れをアナウンスする「衝撃と畏怖(shock and awe)」のアプローチではなく、終了期限を定めずに、より小規模の国債買い入れプログラムを一定の期間内に実行した上で、その間の各種経済データの改善度合いをにらみながら、プログラムをそのまま継続するか、それとも減額・打ち切りなど何らかの調整を加えるかを決めていくというスタイルである。これには、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を運営する上で、より多くの柔軟性を有することができるというメリットがある。

 今年のFOMC投票権メンバーの中ではセントルイス連銀ブラード総裁が、こうした小刻みな国債買い入れの手法が妥当だと主張。一方で、数人の当局者は国債買い入れ増額による経済の「微調整」に慎重姿勢。小刻みな手法は妥協点になり得ると、この記事は伝えた。説得力のある内容だと、筆者は受け止めている。

 上記の記事は、「国債買い入れ増額決定の有無は、経済成長とインフレに関して今後入手されるデータ次第であり、仮に景気に上向きの勢いがつくようだと、行動は必要ないと当局者は決定するかもしれない」とも述べて、一種のヘッジをかけている。だが、9月のFOMC声明文が物価動向への警戒感と追加緩和の用意を明記したこと、買い入れ手法について当局者が具体的な議論まで踏み込んでいるようであること、「追加量的緩和(QE2)」実施を織り込んで米国株がこのところ堅調に推移していることから、今後の景気指標がよほど強くならない限り、次回11月のFOMCで国債買い入れ増額が決まる可能性が高い。

 同じ9月28日、アトランタ連銀ロックハート総裁が講演で、「明白なデフレが進行するとは想定していないものの、年央における景気減速と、非常に低いインフレ率は、デフレリスクが否定できないことを示しているように思われる」と述べて物価面での警戒意識を前面に出した。その上で、今後数週間、金融政策を巡る議論が一段と強まる見通しであり、政策金利がここまで低下している以上、追加緩和はバランスシートの拡大ということになると指摘。次回11月のFOMCで追加緩和が行われる可能性を示唆した。その場合はおそらく米国債(Treasury bills and notes)の買い入れ増額が行われるだろうとロックハート総裁は述べて、テクニカルにはこれは「量的緩和」であるとした。