梶田氏と大村氏にノーベル賞、ストックホルムで授賞式

スウェーデン・ストックホルムで開催された2015年のノーベル賞授賞式の後、アルフレド・ノーベルの胸像の横に並んで写真撮影に応じる、物理学賞の梶田隆章・東大宇宙線研究所長(右)と医学生理学賞の大村智・北里大特別栄誉教授(2015年12月10日撮影)〔AFPBB News

 ノーベル賞の授賞式が開かれた12月10日、この原稿を欧州で記しています。各々の受賞者がどのような講演をされるか、毎年大変楽しみにしています。

 例年、この時期にこういう話題に触れているわけですが、残念ながら私のコラム程度のことでは、日本社会の科学受容の水準はびくともしない様子、ちょっと残念なイントロから始めねばなりません。

 昨年もSTAP細胞詐欺など、あきれるしかない事件が発生、コピペで博士の学位を騙し取ろうとした悪質な犯罪の余波で、各大学院の学位指導では「コピペ・チェックソフト」といううすら寒い代物が導入されました。

 全学生の草稿がチェックを義務づけられています。

6割の確率で見落とすソフト

 しかし、そのソフトにわざと作ったコピペ偽者を通したところ、6割の確率で見落として「OK」と答えてしまうという、ただただ低レベルの漫画状態が続いています。

 ここでは原点に戻って、まともな手筋を考えましょう。

 自然科学に答を与えるのは人間ではありません。自然です。仮にどんなに優れて見える理論でも、実際に実験したり観測したりして、現実に合致しなければ、それは科学的に意味をなしません。

 ノーベル医学・生理学賞を受賞した大村智・北里大学特別栄誉教授もストックホルムのカロリンスカ研究所で「微生物は無限の可能性を秘めている。答えは自然の中にある」との記念講演をされたようです。全くその通りだと思います。

 数学など、形而上学であれば話はまた違ってきますが、サイエンスやテクノロジーは自然の中で起きる現象を見出すことが基本、その実証性、手順の明快さと確固たる再現性があって、初めて業績とされるわけです。

 ということで、今回は自然に問いかける科学的な「実験」とは何か?を 改めて考えて見ましょう。