中国の「QT」が引き起こす世界の金融バブル崩壊

原油市場が「強気相場入り」? しかし結果は三日天下に

2015.09.04(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44709
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原油価格を引き下げる人民銀行の「QT」

 8月27日からの原油価格急騰は、米国の第2四半期のGDP成長率の改定値が3.7%と市場予想を上回ったことがきっかけだった。そのことが示すように、持続的な原油価格の回復には、世界経済の勢いを取り戻すしかない。

 しかし、リーマン・ショック後の救世主だった中国政府がリセッション回避に失敗すれば、世界全体が景気後退に陥り、原油価格の下値が見えない状態になってしまう。

 9月1日に中国国家統計局が発表した8月の製造業購買担当者指数(PMI)は3年ぶりの低水準だった。それをきっかけに世界の株式市場は「2段下げ」の様相を呈してきている。世界の金融市場は中国経済の減速以上に動揺している感が強い。

 景気対策の一環として政府が8月に実施した人民元の切り下げは、資本流出の拡大を招いてしまった。人民銀行は人民元急落を阻止するための人民元買い・ドル売り介入を余儀なくされ、これにより国内の金融市場で流動性が低下し、経済成長の足を引っ張る事態が生じている。

 この事態を打開するため、人民銀行は8月25日に銀行融資拡大のための預金準備率の引き下げを実施した。だが、意図に反してさらなる資本流出を招いてしまい、人民銀行はさらなる為替介入に追い込まれる。そしてまたもや流動性不足に直面し、資本流出が加速するという悪循環に陥っている。

 途方に暮れた人民銀行は人民元の取引自由化に完全に逆行する措置を講じ始めている。資本流出の温床となっている為替予約を実質的に封じ込めるために、10月15日から顧客が元売り・外貨買いの為替予約を結ぶ場合、銀行は残高の20%を「危険準備金」として人民銀行に預けさせることを決定した(9月2日付日本経済新聞)。

 こうして中国政府はなりふりかまわず資本流出防止策を実施しているが、この動きが世界の金融市場全体にまで「量的引き締め」という深刻な副作用を生じさせるとの懸念が高まっている(8月28日付ブルームバーグ)。

 中国は2003年以降、人民元の上昇を抑制するため元売り・ドル買いを前例のない規模で行い、10年間で約4兆ドルの外貨準備を積み上げた。資産の内訳は米国債が中心だったが、その後、中国経済が減速に転じ資本流出が生じたため、今年7月には外貨準備が前年比5000億ドル超も減少した。さらに8月には、人民元の切り下げなどの影響もあって最大2000億ドルの資本が流出したと言われている。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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