脱原発の“不都合な真実”:ドイツの実態に目を向けよ

偏向した情報を伝える日本の報道、議論すべきは最善のエネルギーミックス

2014.08.20(水) 川口マーン 惠美
    http://goo.gl/4r4uPv
  • 著者プロフィール&コラム概要

 つまり、「再エネは最もコストの安い発電方法」というだけでは、再エネの急増と電気代高騰の真の因果関係が見えてこない。もし、本当に最もコストが安いのならば、法律の改訂は必要ないし、もっと増やせばよいということになる。さらに単純に言えば、市場で競争すればよいだけである。

 なぜ、再エネが増えて電気代が高騰したかの理由は、言うまでもなく、再エネに掛かっている“固定価格20年間全量買い取りの補助金”が膨れ上がってしまったからだ。しかも、今までの再エネ法には施設拡大の上限もなく、いくらでも増やせた。だからこそ再エネは増えたが、しかし、安い電気代からはかけ離れたものになった。

 反対に、この補助金なしでは、再エネがこれほど増えることもなかっただろう。再エネは、補助金なしで普及し、市場で競争できるところまで、まだ進化していない。

電気代高騰、滞る送電線建設、増加するCO2・・・

 電気代高騰の原因は、太陽光と風力による発電が計画的に制御できないために起こる。太陽光は曇りや雨の日はもちろん、夜は絶対に発電できないし、風には凪がある。

 反対に、需要がないのにたくさん電気ができてしまうこともあるが、その場合、蓄電ができない。そうなると、しかたなく捨て値、あるいは持ち出しで、隣国に買ってもらうことになる。

 生産者は、電気の卸値が安くても、固定価格で全量を20年間にわたって買い取ってもらえるのでどんどん発電する。その買い取りのお金は、一般消費者の電気代に乗っている。買い取りと卸値の差額は、電気がだぶつくとますます増える。

 だから、いずれにしても電気代は上がり、つまり、損をするのは一般国民ということになる。別にむずかしい話ではない。

 ただ、この問題は、蓄電ができればある程度片付くはずだ。だから、現在、ドイツはその研究に余念がない。しかし、まだ、大量の電気を蓄電できる採算の取れる技術は確立していない。まもなくできる見込みもない。

 そんな方法があれば、皆、使っているだろう。風力電気の生産の多いデンマークも、余った電気は隣国に安値で買ってもらっているのが実情なのだ。

 ドイツの脱原発の実態について、日本ではかなり偏向した情報が出回っている。ドイツの電気代は頭打ちで、これから安くなっていくような報道も目立つが、ドイツ政府によればその予定はない。

 法律の改訂で買い上げ値段を下げても、すでに設置されている施設に対しては既定の額を払い続けなくてはならないから、すぐに電気代は下がらない。

2
スマートエネルギー情報局TOPに戻る
PR
PR
PR
バックナンバー一覧 »

POWERED BY

  • ソーシャルメディアの公式アカウントOPEN!
    TwitterFacebookページでも最新記事の情報などを配信していきます。「フォロー」・「いいね」をよろしくお願いします!
Twitter
RSS

川口マーン 惠美 Emi Kawaguchi-Mahn

 

大阪生まれ。日本大学芸術学部音楽学科卒業。

85年、ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。シュトゥットガルト在住。

 

90年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓。その鋭い批判精神が高く評価される。『国際結婚ナイショ話』、『ドレスデン逍遥』(ともに草思社)、『母親に向かない人の子育て術』(文春新書)など著書多数。最新刊『サービスできないドイツ人、主張できない日本人』(草思社)好評発売中。ドイツから見た日本、世界をレポートする。

 

2011年4月より、拓殖大学 日本文化研究所 客員教授

欧州

欧州は観光ばかりでなく農業や地方の活性化、また少子高齢化対策などでも日本が学ぶべき点が多い。日本が課題とするこうした点を欧州ではどのように克服しようとしているのかの実例をお送りする。また、欧州で高く評価される日本の芸術・文化などのソフトパワーについてレポートする。

>>最新記事一覧へ