8月1日、ドイツでは、改訂版の再生可能エネルギー法(以下「再エネ法」)が施行された。昨年12月に第3期メルケル内閣が立ち上がって以来、ガブリエル経済・エネルギー大臣が、わき目もふらずに推し進めていた改訂だった。
現在、ドイツはメルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)とSPD(社民党)の大連立で、SPDの党首ガブリエル大臣は、副首相、そして、経済・エネルギー大臣を務めている。言うまでもなく、再エネ法の早急な改訂は、ドイツ国にとって、危急の重大事項であった。
ドイツが再生可能エネルギー法の改訂を急いだ理由
再エネ法というのは、ドイツの脱原発の一番の要となる法律だ。なぜか? それは、この法律が、再エネ電気の“固定価格20年間全量買い取り(FIT)”を定めているからだ。
再エネ法が制定されたのは2000年。ちょうど、シュレーダー首相の下、SPDと緑の党が政権を握ったときだった。以来、この“固定価格20年間全量買い取り”によって、再エネの発電施設はどんどん増えた。
特に急増したのが太陽光発電の施設で、この14年間で、発電容量は90メガワットから3万6008メガワットと400倍に伸びた。しかし、太陽光発電の稼働率はわずか9.5%なので、実際、全体の発電量に占める割合はまだ5%弱に過ぎない。
また、風力発電も急増し、再エネは、容量だけで見れば、すでにピークの電力需要を上回る巨大施設となっている。純粋に設備を増やすという意味合いから見れば、再エネ法は偉大な功績を果たした。
ただ、今では、再エネ法の欠点も多く露出してきている。欠点が無ければ、もちろん、ガブリエル大臣がこれほど慌てて改訂に走る理由もなかった。再エネをもっと増やし、電源は再エネだけにすべきだと主張している人たちは、「あまりの成功のため、ブレーキを掛けなければならなくなった」などと言っているが、それは詭弁だ。
本当に成功ならばブレーキは必要ない。実際には、成功の裏に不都合が生じ、その不都合が無視できないほど大きくなり、ブレーキが必要になったというのが正しい。だから、私たち日本人は、一歩先を行っているドイツでどんな不都合が起こっているのかを、ちゃんと見た方がよい。
不都合の1つは、電気代の高騰だ。「再エネはすでに世界の多くの地域で最もコストの安い発電方法」と言っている人がいるが、これは正確ではない。太陽や風は確かに無料だが、しかし現実には、ドイツ政府は電気代高騰を抑えるため、再エネの拡大にブレーキを掛けなければならなくなっている。