脱原発の“不都合な真実”:ドイツの実態に目を向けよ

偏向した情報を伝える日本の報道、議論すべきは最善のエネルギーミックス

2014.08.20(水) 川口マーン 惠美
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8月1日、ドイツでは、改訂版の再生可能エネルギー法(以下「再エネ法」)が施行された。昨年12月に第3期メルケル内閣が立ち上がって以来、ガブリエル経済・エネルギー大臣が、わき目もふらずに推し進めていた改訂だった。

 現在、ドイツはメルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)とSPD(社民党)の大連立で、SPDの党首ガブリエル大臣は、副首相、そして、経済・エネルギー大臣を務めている。言うまでもなく、再エネ法の早急な改訂は、ドイツ国にとって、危急の重大事項であった。

ドイツが再生可能エネルギー法の改訂を急いだ理由

ドイツで広がる自家発電、産業界では20%にも

ドイツ・ベルリンの住宅の屋根に設置されたソーラーパネル〔AFPBB News

 再エネ法というのは、ドイツの脱原発の一番の要となる法律だ。なぜか? それは、この法律が、再エネ電気の“固定価格20年間全量買い取り(FIT)”を定めているからだ。

 再エネ法が制定されたのは2000年。ちょうど、シュレーダー首相の下、SPDと緑の党が政権を握ったときだった。以来、この“固定価格20年間全量買い取り”によって、再エネの発電施設はどんどん増えた。

 特に急増したのが太陽光発電の施設で、この14年間で、発電容量は90メガワットから3万6008メガワットと400倍に伸びた。しかし、太陽光発電の稼働率はわずか9.5%なので、実際、全体の発電量に占める割合はまだ5%弱に過ぎない。

 また、風力発電も急増し、再エネは、容量だけで見れば、すでにピークの電力需要を上回る巨大施設となっている。純粋に設備を増やすという意味合いから見れば、再エネ法は偉大な功績を果たした。

 ただ、今では、再エネ法の欠点も多く露出してきている。欠点が無ければ、もちろん、ガブリエル大臣がこれほど慌てて改訂に走る理由もなかった。再エネをもっと増やし、電源は再エネだけにすべきだと主張している人たちは、「あまりの成功のため、ブレーキを掛けなければならなくなった」などと言っているが、それは詭弁だ。

 本当に成功ならばブレーキは必要ない。実際には、成功の裏に不都合が生じ、その不都合が無視できないほど大きくなり、ブレーキが必要になったというのが正しい。だから、私たち日本人は、一歩先を行っているドイツでどんな不都合が起こっているのかを、ちゃんと見た方がよい。

 不都合の1つは、電気代の高騰だ。「再エネはすでに世界の多くの地域で最もコストの安い発電方法」と言っている人がいるが、これは正確ではない。太陽や風は確かに無料だが、しかし現実には、ドイツ政府は電気代高騰を抑えるため、再エネの拡大にブレーキを掛けなければならなくなっている。

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川口マーン 惠美 Emi Kawaguchi-Mahn

 

大阪生まれ。日本大学芸術学部音楽学科卒業。

85年、ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。シュトゥットガルト在住。

 

90年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓。その鋭い批判精神が高く評価される。『国際結婚ナイショ話』、『ドレスデン逍遥』(ともに草思社)、『母親に向かない人の子育て術』(文春新書)など著書多数。最新刊『サービスできないドイツ人、主張できない日本人』(草思社)好評発売中。ドイツから見た日本、世界をレポートする。

 

2011年4月より、拓殖大学 日本文化研究所 客員教授

欧州

欧州は観光ばかりでなく農業や地方の活性化、また少子高齢化対策などでも日本が学ぶべき点が多い。日本が課題とするこうした点を欧州ではどのように克服しようとしているのかの実例をお送りする。また、欧州で高く評価される日本の芸術・文化などのソフトパワーについてレポートする。

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