皆さん、今の時期はたぶん、日本の科学研究関連の史上稀な見世物がメディア上で確認できる貴重なタイミングと思います。どうぞ見逃さず、よく目を凝らして真実を見通されることをお勧めします。7月7日の東京大学哲学熟議でも、その時点での進捗をもとに一切値引きのない議論を予定しています。

 実のところ、メディアでは、例えば日経サイエンスのような一般紙が、きわめて明快に「STAP細胞の正体」を解説しています。

 今や何が起きていたかは明らかで、その舞台裏の詳細が見えている。

 例えて言うなら「わたしは空中浮揚ができる」と称する「尊師」が登場してマスコミの耳目を集めた後、実はそれがロープで吊って目の錯覚でごまかした舞台裏がすべてバレている状況と考えればよいでしょう。

 ここまでネタばれしているところで、

 「いや、まだ断言はできない」と言う人は、いったいどういう底意があって発言行動しているか?

 さらに、「いや、もう一度“尊師”に追実験させてみるまでは分からない」などと言うのが、どれくらい科学の常道から見ておかしなことであるか・・・。

 現時点で理化学研究所をはじめとする関係機関が、お茶を濁したり時間を稼いだりしているすべて「サイエンスとは無関係の、別の思惑による」とは、前回、前々回も記したとおりです。

 今、固有名詞など挙げはしませんが、せっかく取ったノーベル賞に傷をつけるようなことは慎んだ方がよいのでは、というのが、一個人として率直に思うところです。

 科学には科学の明るみがあり、そこに引き出して一点の曇りもない仕事をする環境が、望まれる高等学術研究の基礎的な場にほかなりません。

 現時点で、サイエンスに照らして不合理な、組織の内在論理なり政治的思惑なりのバイアスがかかった発言があるような構造は、すべていったん停止、発展的に改組していくのが、本当の意味で科学の未来を築くと指摘せねばなりません。

ナノテク&高温超伝導: ベル研究所で起きた詐欺

 さて、そんな理研に対して徹底的な再発予防の釘をさした提言書「21世紀3大研究不正」の第3番目とされたSTAP細胞捏造詐欺事件ですが、前回、第2番目の研究詐欺、韓国ソウル大学獣医学部で発生した「ヒトクローン・ES細胞詐欺」事件を、その背景を含めて検討しました。

 今回は残る「3大不正第1の詐欺事件」米国ベル研究所とドイツ・コンスタンツ大学と、大西洋をまたにかけ欧州と米国とで発生した高温超伝導詐欺事件「シェーン・スキャンダル」の例から、STAP詐欺と同様の構図を確認、再発防止につなげる知恵を考えたいと思います。

 「STOP the STEP to STAP」こそが、今建設的に大学人が考える価値のある取り組みと考えます。

 ヘンドリック・シェーンは1970年生まれといいますから今年44歳、現在はドイツで会社員をしており、学位は剥奪されて博士号を持っていません(このあたりもSTAP事件の事後処理に大いに参考にすべきところと思います)。