今回より9回にわたって営業変革に関する記事をお届けします。第1回目の今回は、営業変革の上位概念としての「CRM(Customer Relationship Management)」に関して解説します。

 CRMという言葉には様々な意味が込められており、関与する立場によって解釈が違ってくるため、企業としてスコープが定まりにくい性質があります。事実、調査会社のリポートにおいてもCRM構築の半数以上は失敗に終わっているとも酷評されています。

 しかしながら、CRMは戦略的にスコープを定めながら経営モデルとして導入すれば競争力を向上させることは間違いありません。

 今回は、CRMを企業戦略と捉えて、その意義を論じます。またそのCRM戦略の中に本連載のテーマである営業変革が含まれていることを解説します。

戦略立案のパラダイムシフト

 従来、企業の戦略立案遂行にあたっては、事業戦略の立案、プロダクト戦略の立案、商品開発、マーケティング戦略立案、セールス、納入、サポートといった上流戦略から、一連のプラン&アクチャルの繰り返しによる業務プロセスが遂行されてきました。そして、この一連の業務をいかに効率よくかつ効果的に実践できるかが競争優位の源泉でした。

 本パラダイムにおいては、企業の優位性は商品の優位性によるところが大きく、いかに競争環境が少ない事業領域を早期に選択し、他社と差別化された商品を提供し、さらにマーケットシェア拡大と大量生産によるコスト削減効果を狙っていくことが企業の大きなテーマでした。