中国人民解放軍羅援少将は強硬発言というよりは“暴言”で名を馳せている人物であるが、その発言に対する防衛大学校関係者による反論が、筆者の周辺ではちょっとした議論の対象になっている。

羅援少将曰く「日本は火の海になる」

 羅援少将は、もともとは軍人ではない。中国軍事科学院の研究者であり、世界軍事研究部副部長などを務め、人民解放軍関係の書物などの著作の功績により中国人民解放軍少将の肩書を与えられた人物である。

 人民解放軍に限らず、アメリカ軍などでも戦史研究や戦略論研究などの部局は充実しており多数の学者・研究者を擁しているが、そのような非戦闘員たる軍事専門家に戦闘員たる軍人の階級を付すところにも中国共産党の“私軍”としての人民解放軍の特異性が表れている。現在、羅援“名誉”少将は、中国共産党「人民日報」の国際版である「環球時報」をはじめとして軍事評論活動を活発に展開している。

 その羅援少将が、昨今の中国海洋政策の強硬化や日中関係の険悪化を背景に、以下のような強硬な発言をした。

 「中国と日本が戦争になったら、中国軍による大量のミサイル攻撃により日本は火の海になる」

 「国土が広い中国と違って国土の狭い日本は戦争における持久力はない」

 「1000発以上の日本に照準を合わせているミサイルを保有している中国は余裕を持って日本に勝利することができる」

 「中国は、ミサイル戦力での圧倒的優勢を利用して、日本を抑えこむべきである」

 羅少将の発言の文脈でのミサイルというのは非核弾頭を搭載した長射程ミサイル(東風21型弾道ミサイル、東海10型長距離巡航ミサイル、長剣10型長距離巡航ミサイルなど)である。「1000発のミサイルが日本に照準を合わせている」というのは恫喝的誇張表現であるが、人民解放軍の少なくとも700~800発の対日攻撃能力を持った各種長射程ミサイルを保有していることは真実である。それらのミサイル、とりわけ長距離巡航ミサイルの配備数は日に日に増加している(本コラム「中国軍ミサイルの『第一波飽和攻撃』で日本は壊滅」参照)。