減塩の目標、まずは1日「マイナス3グラム」

再入門、塩分と血圧の危うい関係(後篇)

2014.02.28(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 塩分と高血圧や脳卒中といった病気との関係を追っている。

 前篇では、体に塩分を摂り込むことが血圧上昇にどうつながるかを見てきた。

 塩分を構成するナトリウム(Na)が体内に摂り込まれると、濃くなったナトリウムを薄めるために体は水を必要とする。結果、血管が水で満たされてパンパンに膨らむ。これに伴い心臓のポンプ機能も高まる。こうして血圧は上昇する。特に“塩漬け食文化”のなかで生活してきた日本人の血管はパンパンになりやすい。こうした話を、血圧に詳しい東京都健康長寿医療センター顧問の桑島巌氏に聞いてきた。

 日本人の高血圧患者数は、実に国民の3人に1人の約4000万人とも言われる。多くの人にとって、塩分摂取量を減らすことが血圧を低く抑えるための対策になることには間違いなさそうだ。

 だが、塩は私たちにとってあまりに慣れ親しんできた調味料。減塩は大変な挑戦にも思えてしまう。そこで後篇では引き続き桑島氏に、減塩を行う上での戦略とその工夫をアドバイスしてもらうことにしよう。

夜間に血圧は上昇する

──前篇では、高血圧には、血管が水ぶくれになって血圧が高くなる「パンパン型」と、血管が細く狭まって血圧が高くなる「ギュウギュウ型」の2種類があるとのことでした。日本人にはパンパン型が多いとのことでしたね。

桑島 厳(くわじま・いわお)氏。1971年岩手医科大学卒業後、73年に東京都養育院付属病院循環器科へ。80年米国ニューオリンズオクスナー研究所へ留学。87年東京都健康長寿医療センター内科医長、97年同医療センター循環器科部長、2003年同医療センター内科部長を経て副院長に。現在は同センター顧問。また、特定非営利活動法人臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)理事長も務めている。著書に『高血圧の常識はウソばかり』(朝日新書)『9割の高血圧は自分で防げる』(中経文庫)など多数。

桑島巌氏(以下、敬称略) ええ。パンパン型とギュウギュウ型で分けると、日本人の7割の人がパンパン型です。血管を水分でパンパンにさせる原因は塩分の摂りすぎにあります。つまり、日本人は塩好きのため塩分が原因のパンパン型が多いのです。

──塩分の過剰摂取による高血圧では、どのような症状が特徴的ですか?

桑島 特に夜間の血圧が上がりやすくなります。血管に水がパンパンに満たされた状態で体を横にするため、体中の水分が、起きている昼間より体の中心部に集まりやすくなります。そのため夜間の血圧が高くなりやすいのです。

 人は1日の3分の1ほどの時間帯を体を横にして過ごしています。これだけの長い時間、血圧が高い状態が続けば血管は傷みやすくなります。血管が傷んで脆くなると弾力性を失うため血圧がますます高くなります。こうして、「高血圧、動脈硬化、高血圧、動脈硬化」といった具合に悪循環をきたすようになります。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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