パッと見は西洋風のチョココロネ、
渦巻きの向こうに見えたのは饅頭だった

2014.02.14(Fri) 澁川 祐子
筆者プロフィール&コラム概要

 パンについて数多くの著作を著している安達巌は著書『パンと日本人 主食革命のあゆみ』(日本経済新聞社、1965年)のなかで、あんパンやジャムパン、クリームパンなど の菓子パンについて、日本のそれまでの菓子文化が影響していると指摘している。欧米などでは、クリーム類は生地と一緒に練り込んだり、のせたりするのに対し、日本の昔ながらの菓子パンはすべて生地で中身をくるむタイプである。この根底には、あんを皮で包む饅頭の発想があるという。

 そう考えてみると、チョココロネもまた、典型的な日本の菓子パンだと言える。チョコレートを生地と一緒にツイストするのではなく、わざわざ空洞を作り、その中に詰め込む。クリームパンのようにすべて生地で覆われてはいないが、やはりそこに生地は生地、中身は中身という日本流のやり方が息づいているのだ。

 よく、チョココロネを頭(太い方)から食べるか、おしり(細い方)から食べるかという話がある。ちなみに私は、頭から食べる派だ。

 チョコレートクリームを蓋しているセロファンをはがし、大口を開けてかぶりつくと、香ばしく焼けた生地と甘いチョコレートクリームが両方とも主張し合いながら、口の中に飛び込んでくる。そうして渦にそって食べていくと、最後は、おしりの方にごくわずかに、押し出されたチョコレートクリームが残っているか、残っていないかだ。たいてい最後のひと口は、パンのみになることが多い。

 甘いパン生地とチョコレートクリーム。そのどちらもが憧れの食べものだった時代、人々はそのそれぞれを十分に味わう術を考えた。その結果、たどりついたのがあの形だったのだと、改めてチョココロネを食べて、そう実感した。

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1974年、神奈川県生まれ。東京都立大学人文学部を卒業後、フリーのライターとして食や工芸・デザインを中心に、読むこと、食べること、暮らすことをテーマとしたインタビューやルポ、書評を執筆。『森正洋の言葉。デザインの言葉。』(ナガオカケンメイ監修、美術出版社)、『最高に美しいうつわ』(SML監修、エクスナレッジ)の取材構成ほか、近著に当連載をまとめた『ニッポン定番メニュー事始め』(彩流社)がある。


食の源流探訪

日本人が日常茶飯としている定番食。あまたある食べものの中で、
なぜそれが定番になり得たのか。どのように日本化されていったのか。
「新・日本食」の源流からの流れを、歴史をひもときながら考察する。