例えば、1日1800キロカロリーのエネルギーを食べもので得ることで体重をキープしている人が、300キロカロリー分をアルコールで得るようになったとします。きっと、その人は痩せていくことでしょう。
しかし、お酒を飲むことによって、食べものから摂り込んだ脂肪の代謝が遅れることがあります。また、糖分の代謝にも影響を及ぼします。ですので、お酒と一緒に摂る食べものや、ビールや日本酒に多く含まれている糖分などは、体にたまりやすいと言えます。そのようなことから肥満になることはあり得ます。
アルコール代謝を早める牛乳や食事の効果
──もう1つ、宴会の前に牛乳を飲む人もいます。聞くと、胃に膜ができてアルコールの吸収を抑えられるからといいます。これは本当でしょうか?
重盛 胃に作られた牛乳の膜がアルコールの吸収を抑えるということはありません。
あるテレビ番組に協力して、牛乳を飲んだ人と水を飲んだ人がお酒を飲むと、血中のアルコール濃度がどうなるか実験したことがあります。牛乳を飲んだ被験者に胃カメラまで飲んでもらったところ、確かに胃に膜が作られていることが分かりました。しかし、お酒を飲んだ直後の血中のアルコール濃度の高まりかたは、水を飲んだ人と変わりませんでした。
そもそも、アルコールの分子は、血管から脳に浸透するほど小さなものです。一方、牛乳は白い液体に見えますが、比較的大きな白い粒々によるものです。胃に牛乳の膜ができても、アルコールの分子は小さいので隙間を通過して吸収されてしまうのです。
──胃に膜を作っても、アルコールの吸収のされ方に違いはない、と。
重盛 ええ。しかし、その後の経過には、牛乳を飲んだ人と水を飲んだ人で違いが見られました。肝臓でのアルコールの代謝スピードについては、牛乳を飲んだ人のほうが早かったのです。つまり、酔いが覚めやすかったということです。
この実験では、実験協力者に日本酒を3合、飲んでもらいました。血中のアルコールの濃度がゼロになるには8時間は必要です。しかし、牛乳を飲んでいた人は、ゼロになるまでの時間が1~2時間ほど短縮されていました。
お酒とともに、牛乳やタンパク質を摂っていると、アルコールの代謝が進むということが言えそうです。牛乳のほか、例えば、甘いものを食べておくのも、酔いの覚めを早めるのに効果的です。
(後篇につづく)