これまでの日本のエネルギーシステムといえば、火力や原子力といった大規模発電所を遠隔地に建設し、大都市などの大量消費地へと長距離送電が行われてきた。しかし、3.11の東日本大震災と原発事故は、大規模集中型電源に頼ることの脆弱性を露呈する形となった。

3.11の教訓は次世代エネルギーシステムにどう生かされているか

 いま日本に求められているのは、環境性、経済性、供給安定性を備えた災害に強いエネルギーシステムである。多様なエネルギーを組み合わせ、リスク分散と効率性を確保する分散型の次世代システムを実現していく必要がある。

 「世の中では、原発か再生可能エネルギーか、という形でしかエネルギーについて語られていませんが、実際、私たちが使っているエネルギーというのは、電気よりも熱の割合のほうが高い。電気のことだけを議論していては、不十分なのです。その答えの1つとして、われわれガス会社が進めているのがコージェネレーションです」

 そう話すのは、大阪ガス エンジニアリング部 エネルギー・電力ソリューションチームマネジャーの松本将英さん。

 コージェネレーションとは、熱と電力を同時に供給することのできるシステムのこと。通常、石油や天然ガスを燃やして発電を行う際の発電効率は40%程度で、残りは排熱になるが、この排熱を回収して冷暖房や給湯に利用すれば、エネルギー効率は70~80%にまで向上する。

 コージェネレーションは需要先に設置されるため、送電ロスも少なく、非常に効率のよい分散型電源の1つだ。

 それでも事業者や建物ごとに電気や熱の需要は異なることから、コージェネレーション単体で電気と熱のバランスを最適化するというのは難しい。コージェネレーションで生まれた電気や熱を余すことなく使うには、住宅やビル単位だけでは限界があるのだ。

 そんななか、注目を集めているのが「スマートエネルギーネットワーク」だ。コージェネレーションシステムを中心に、さまざまなエネルギーを組み合わせ、さらにICT(情報通信技術)で地域全体をネットワーク化することで、エネルギー利用の最適化を図ることのできるシステムである。

スマートエネルギーネットワークのイメージ