「酵素ジュースできれいになれる」は本当か?

酵素と生食の真相を追う(前篇)

2013.06.21(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

大澤 酵素を取り入れたとしても、少なくとも“喉の下”あたりからは酵素の効き目がなくなると思います。

大澤俊彦氏。愛知学院大学心身科学部健康栄養学科教授。名古屋大学名誉教授。農学博士。1974年、東京大学大学院農学研究科博士課程修了。オートストラリア国立大学理学部化学科リサーチフェローを経て、1978年、名古屋大学農学部へ。助手、助教授、教授を経る。2010年より愛知学院大学心身科学部学部教授、2011年より同学部長に就任。日本フードファクター学会理事長、日本ゴマ科学会会長、日本AOU研究会理事長、日本食品安全協会理事などを歴任。

 私たちの体の胃からは、タンパク質を分解するペプシンという酵素が出てきます。外から入ってきたタンパク質である酵素を、私たちのタンパク質分解酵素が分解するわけです。これで、外から入ってきた酵素はアミノ酸という物質に変わります。「酵素ジュース」などで体に取り込もうとした酵素は、胃ですでにバラバラになってしまうというわけです。

 バラバラになった物質が体に取り込まれて、体の中でAという物質をBに変えるような作用が示されれば、その物質には酵素作用的な効果があると言えるでしょう。しかし、ほとんど期待できないというのが、私の考え方です。完全に否定するわけではありませんが、効果があるとするデータはほとんど存在しないのではないでしょうか。

──「酵素でやせやすい体質になる」と訴える本もあります。「消化がよく酵素たっぷりのジュースが排泄の働きを助ける」ということのようです。

大澤 排泄の働きを助けるのは食物繊維です。酵素たっぷりのジュースに、食物繊維も確かに入っているかもしれませんが、酵素自体が排泄に働くようなことはありません。

──「酵素は加熱すると壊れてしまうので、ジュース作りには生の野菜や果物を使うことが肝心」ともあります。

大澤 確かに、酵素は加熱すると壊れてしまいますが、一般的に摂氏60度ぐらいまでであれば壊れません。しかし、そもそも「外から取り入れる酵素が体に効く」ということを前提に語られていることが問題だと思います。

──さきほどの話では「少なくとも“喉の下”あたりからは酵素の効き目がなくなる」とのことでした。では、喉の下あたりまでならば、酵素を外から取り入れる効果があるということでしょうか。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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