地方経済見聞録

人工呼吸器で未熟児の命を救う!
ベトナム人留学生が日本で目覚めた使命

2013.06.13(木)  橋本 久義

 「鈴木修会長、津田社長には本当に感謝しています。私たちが一番困っているときに救いの手を差し伸べてくれました。しかもスズキの本業とは関係のない分野です」

 スズキの援助も受けて開発していったが、資金問題以外にも苦労は多かったとフックさんは言う。

 「医療用機器の開発は大変なんです。日本の大企業はどこも医療産業に対してとても臆病で、部品などを売ってくれない。例えば、液晶ディスプレーのようなごく一般的な商品でも、『人工呼吸器に使う』と言うと売ってもらえない。医療訴訟を起こされたとき、企業イメージが悪くなる、ということのようです。だから、やむを得ず海外の小さな企業から輸入したり、自社で作る部品も多いです。

 また医療機器開発でもう1つ困難な点は、日本では、臨床現場で使ってみて効果を立証する『治験』に協力してくれる医療機関が少ないことです。

 もともと医師たちは新しい治療法を疑いの目で見る傾向がありますし、日本の小児科医療の現場は猫の手も借りたいほど忙しい。余計なことはやりたくないのです。仮に協力者が見つかっても、データを得るために2~3年かかるし、治験対象患者の治療費は全額負担しなければならない。これでは新製品を売り出す前に倒産してしまいます」

 「治験」が終了したとしても、障害は多い。その最大のものが医療器械の審査体制だ。とにかく審査が遅い。時間がかかりすぎる。それというのも、アメリカではFAOが1000人体制で審査しているのに、日本は審査官の数が100人ほどしかいない。少なすぎるのだ。

患者の呼吸に負担を与えない吸気ガス流量センサー

 最近、メトランは人工呼吸器用の超音波流量センサーを開発した。人に優しい医療を追求する同社ならではの製品だ。

 この超音波流量センサーは、人工呼吸器が送り出す吸気ガスの流量を、超音波を利用して計測する。吸気ガスの流量を測定・制御する従来のセンサー類は、不安定で、かつ流体の流れに抵抗を与える。そのため患者の呼吸(自発呼吸)に負担を与えていた。メトランが開発した超音波流量センサーはこの問題を解決し、より質の高い医療を追求することができる。

 メトランは、売り上げの約20%を研究開発費に投じている。社員たった35人の中小企業にとって、決して小さな負担ではない。超音波流量センサーのほかに、埼玉県の補助金で新型インフルエンザのパンデミック用の小型人工呼吸器も開発中だ。

 これからもメトランには、たくさんの開発をしてもらいたいし、メトランのように外国の人たちが成功できる国でありたいと思う。

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