地方経済見聞録

人工呼吸器で未熟児の命を救う!
ベトナム人留学生が日本で目覚めた使命

2013.06.13(木)  橋本 久義

 フックさんの機械が高い評価を得たのは、「HFO(High Frequency Occiration)」方式を採用したからだ。この方式は空気を900ヘルツほどの振動数で振動させながら送るため、肺に圧力をかけずに換気ができる。

新生児、小児用の「高頻度人口呼吸器 ハミングX」

 ちょっと分かりにくい話だが、例えば「ふーっ」と息を吐くと30センチ程度先であれば、圧力を感じるだろう。しかし2メートルも離れたら、たぶん何も感じない。ところが煙草の臭いは20メートル先でも分かる。拡散現象で伝わるからだ。空気を振動させることで、拡散を活発化させるのだという。

 人間の肺は気管の入り口から23~24回分岐していく。その先端一つひとつに肺胞があり、そこで酸素交換をする。肺胞の表面積を全部合わせると、成人ではテニスコートほどの面積になるという。何十段階にも分岐しているから、圧力をかけてもなかなか先端の肺胞までは酸素が到達しない。変に圧力をかけると、気管の弱いところが膨らんで破裂してしまう。

 ところが900ヘルツほどで振動させると、酸素が奥の肺胞まで入っていきやすくなる。その効果は、100倍にも、時には1000倍にもなるという。コンクリートに穴を開けるとき、ドリルの刃を前後に振動させながら圧力をかけると、小さな力でも開く。それと同じかもしれない。

 いずれにせよアメリカNIH(国立衛生研究所)から著しい効果が認められて、小児用人工呼吸器では90%のシェアを持つに至っている。

 製品の進化はさらに続く。加湿器を工夫して、未熟児が吸入する空気の湿度を保ち、乾きからの気道損傷を防ぐ人工呼吸器を開発した。人に優しい救命医療をシステム全体で考えているのだ。この人工呼吸器の開発により、従来救命できなかった超低体重の新生児が救命できるようになり、日本は世界で最も新生児の死亡率が低い国になった。

日本で医療機器の開発が困難な理由

 ところで、小児用は大成功したのだが、成人用に応用するにはまた別の開発が必要だ。そこで新技術開発事業団(現・科学技術振興機構)の研究開発助成制度の適用を受けようと申し込んだ。ところが、従業員6名、借入金3億円という数字を見て、全く相手にしてもらえない。

 開発には資金がいる。困っていたら、ふとした縁で知り合ったスズキの津田紘社長(当時)がスズキ財団を通じて支援してくれた。全くの異業種から支援を受けて見事成功にこぎ着けた。

 「鈴木修会長、津田社長には本当に感謝しています。私…

<<好評発売中!>>
【JBpress新書シリーズ発刊!】
第一弾は「若者よ、外資系はいいぞ」
~四十代年収四千万になる人生設計術:祖父江 基史氏・著<

楽天SocialNewsに投稿!
このエントリーをはてなブックマークに追加

経営戦略 一覧ページへ

媒体最新記事一覧