異国で出合った「テリヤキバーガー」発明のヒント

“突然変異”で誕生したグローカルメニュー

2012.10.26(Fri) 澁川 祐子
筆者プロフィール&コラム概要

 「テリヤキバーガー」と名付けられたハンバーガーは最初こそ人々に敬遠されたが、先入観のない女子高生たちによって徐々に口コミで広まっていった。テリヤキバーガーの人気はモスバーガーの名を全国に知らしめ、店舗拡大の弾みとなったのである。

 このテリヤキバーガー誕生秘話には、驚いた点が2つある。1つは、テリヤキバーガーの原型は日本ではなく、アメリカにあったということ。そして、もう1つは一般の照り焼き料理とは異なり、タレに味噌が入っていることだ。

 「テリヤキ」は「照り焼き」にあらず。テリヤキバーガーは、いったんアメリカを経由したものをさらにアレンジしたものであり、伝統的な照り焼き料理とは似て非なるものだったのである。つまり、ここに“突然変異”した飛躍のワケが隠されていたのだ。

 他のチェーンがモスバーガーに追随してテリヤキバーガーを発売するのは、だいぶあとになってからだ。1986年にロッテリアが期間限定商品として「てりやきバーガー」を発売。1989年には、マクドナルドがこれまた期間限定商品として「てりやきマックバーガー」を発売したが、あまりの人気ぶりに急遽定番メニューに加えることになった。

 こうしてテリヤキバーガーは、いまや日本のチェーンではなくてはならないメニューとなったのである。

 イギリス生まれのサンドウィッチ、ドイツ生まれのハンバーグがアメリカで合体し、ハンバーガーが誕生する。時を経て、今度は照り焼きのタレがアメリカでハンバーガーと出合う。それが逆輸入で日本に伝わり、さらなるアレンジを加えられて元祖和風バーガーとなる――なんとも複雑だ。

 いま当たり前のように、この日本に存在しているテリヤキバーガー。それは、長い時を超え、何度も海を行き来した末にようやく誕生した食べものなのであった。

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1974年、神奈川県生まれ。東京都立大学人文学部を卒業後、フリーのライターとして食や工芸・デザインを中心に、読むこと、食べること、暮らすことをテーマとしたインタビューやルポ、書評を執筆。『森正洋の言葉。デザインの言葉。』(ナガオカケンメイ監修、美術出版社)、『最高に美しいうつわ』(SML監修、エクスナレッジ)の取材構成ほか、近著に当連載をまとめた『ニッポン定番メニュー事始め』(彩流社)がある。


食の源流探訪

日本人が日常茶飯としている定番食。あまたある食べものの中で、
なぜそれが定番になり得たのか。どのように日本化されていったのか。
「新・日本食」の源流からの流れを、歴史をひもときながら考察する。